戦犯は小泉内閣だけか。後期高齢者医療制度をめぐって
4月に後期高齢者医療制度(長寿医療制度)がスタートして以来、道路特定財源問題を経てもなお与党支持であった人のなかからも、政府批判が続いている。
後期高齢者医療制度の報道については、お年寄りへのインタビューが主で、お年寄りばかりでなく多くの国民が、“等身大の憤り”をもって迎えている。いま報道のなかで繰り返されているのは、与党の「広報不足・説明不足だった」という言い訳と、知らなかったお年寄りたちの悲鳴。山口2区補選の際をはじめ与党内からも批判の声が挙がっている。また小泉内閣の時限爆弾などという表現もあり、見直しされることもあってか、あたかも「戦犯は小泉内閣」という様相を呈している。
それでは、2年前に決まったというそのとき以来、制度開始が秒読みに入るまで、「なぜ私たちは知らされないままであったのか」。
これを探るため、我々は医療制度改革法案が成立した2006年6月14日、及び翌15日発行の在京新聞各社の報道(東京版)を確認してみた。
*調査対象=読売・朝日・毎日・産経(・共同通信)=見出し等添付pdf参照
★新聞各紙の記事を通読したところ──
■記事の趣旨は「高齢者の負担増」が中心。
■「後期高齢」という表現を使っているのは、共同通信のみ。
■保険料の「年金天引き」について、触れている記事は皆無。
ということがわかった。
すべてに目を通して感じたのは、多くの新聞社ではあまり重要視されていないニュースだったらしいこと。また、いま問題視されている「後期(高齢者)」という呼称や、滞納者に対し保険証取り上げも懸念される保険料の「年金天引き」について、問題視している記事はなかった、ということだ。
2年前のTVニュース報道については、検証の術がないが、新聞よりエンターテイメント性が重視されるメディア特性からして、あまり大きく扱われなかったことが推測されるだろう。
この時期に、医療制度改革関連法案について、積極的に報道していたのは「強行採決」の文字も躍った共産党の政党機関誌『しんぶん赤旗』。6.13の「医療改悪法案で狙う『後期高齢者医療制度』」の記事中に「年金天引き」が明記されていた。
果たして「説明不足」は政府・与党だけだったのか。
現在浮上している問題点は、なぜ報道で取り上げられなかったのか。
成立時の報道で「後期高齢者」「(保険料)年金天引き」が大きく取り上げられ、その内容が、お年寄りをはじめ国民に届いていれば、もっと早くに、世論が大きく動いたのではないか。
2007年参院選のマニュフェストをみると、自民党は「医療制度改革法に基づいた医療保険制度体系の見直しを行う」と言及しているが、民主党では争点とした形跡はない。またいま民主党が公表している「政権政策の基本方針(政策マグナカルタ)」にも、盛り込まれていない。
民主党では、制度見直しに着手した政府・与党に対し「見直しを始める前に、お年寄りの方々の心を大変傷つけたことに対して、お詫びからスタートすべき」と猛省を促した(鳩山由起夫幹事長/5月16日定例会見)。
なぜ、いまになって声高なのか。「総選挙決戦」前にみつけた「新ネタ」であることはいなめないだろう。またこの民主党の姿勢が、報道各社の報道内容に影響したのではないかと考えるのはうがちすぎだろうか。
ちなみに、本法案の閣議決定「健康保険法等の一部を改正する法律案要綱」(2006年2月10日提出)には、「市町村による保険料の徴収には、特別徴収(老齢等年金給付の支払いをする年金保険者に保険料を徴収させ、納付させることをいう。)の方法によるほか、普通徴収の方法によること。」(P27より抜粋)と明記されており、毎日新聞ではこの時点で、「後期高齢者すべて加入し、年金から保険料が天引きされる新たな高齢者医療制度を創設する」(2006.02.10東京夕刊)と報道していた。
報道・ジャーナリズムの使命は「権力監視」といわれる。
言い換えれば、国民の立場にたって、それを感じ、伝えることだろう。
多くの報道陣は、市民感覚として、何も、感じることがなかったのか。
もちろん我々は、後期高齢者医療制度の見直しに期待する者だ。
しかしあらためて、いまの後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の「報道“量”」を振り返るとき、メディアの送り手諸氏に、「あのとき」「なぜ」を問い返したいと思うのだ。
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