★またまた古舘(2) BPO裁定も視聴者も愚弄
BPOがテレビ朝日へ重大な放送倫理違反を勧告したことに対し、当の報道ステーション番組中では一般視聴者へ説明がどうなされたのか……。わずか1分半という短時間だったから、録画から文字おこしをしてみた。
◆ 新聞社のネットニュースと大差ない内容
○河野明子
BPO放送倫理番組向上機構の放送人権委員会は、テレビ朝日に対し、報道ステーションの土地改良区と横領事件に関する放送の中で、名誉毀損をきたしかねない重大な放送倫理違反があったとして、今後は放送倫理や人権にいっそう配慮するように勧告しました。
○挿入VTR+「テロップ」
・報道ステーション「『徳島6億円横領事件』報道に関連し、全土連や土地改良事業の仕組みなどを放送」
・ 野中弘務 元官房長官(全土連会長)「あたかも政治力で膨大かつ不要ともいえる事業を持ってきたかのような報道だ」
・BPO放送人権委員会の勧告「放送は野中氏に対する名誉毀損には当たらないが──」
○ 河野明子
番組では去年7月に徳島県で起きた「6億円横領事件」に関連して全土連、全国土地改良事業団体連合会をとりあげ、土地改良事業の仕組みなどについて放送しました。
これに対し、全土連会長の野中広務元官房長官が「あたかも政治力で膨大かつ不要ともいえる事業を持ってきたかのような報道だ」として、BPOに名誉と信用の回復などを訴えて申し立てていました。
BPOの放送人権委員会は、まず、「放送は野中氏に対する名誉毀損には当たらないが、全体の構成やキャスターコメントなどを総合的に考慮すると、名誉毀損をきたしかねない重大な放送倫理違反があった」とテレビ朝日に勧告しました。また委員会決定では「真実性の証明がない」などとして、名誉毀損に該当するとの少数意見も付け加えられています。
○古舘伊知郎
報道ステーションでは、この委員会の決定内容というものを真摯に受け止めまして、放送倫理、そして人権に十分に配慮して精進していくつもりであります。
*出典:報道ステーション(テレビ朝日/2009.3.30 22:26:22〜22:27:56)
◆ 当の報ステでも一般ニュース扱い
翌日の報道ステーションの録画も確認したが勧告に一切触れられることもなく、番組がこの件にふれたのはこれだけ。BPO勧告に対する対応というよりも、ただのニュースとして扱っているような印象で、新聞社から配信されるネットニュース以下の内容といわざるをえない。またどのように受け止め、配慮していくのかという具体的な姿勢が示されることすらないのもこれまで通りだ。
放送倫理規約にある「民主主義の精神にのっとり、放送の公共性を重んじ、法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応えて、言論・表現の自由を守る」という観点からみても、あまりにおそまつで、視聴者及び国民を愚弄した内容であると感じた。
報道ステーションのホームページではこの件に関し、実際、「過去のニュース」の項で扱っているだけ。またテレビ朝日では、4月5日(日)午前4時50分〜の「はい! テレビ朝日です」(広報番組)で、認定内容を放送することを明らかにしている。が、早朝という放送時間設定も含め、「真摯に受け止めている」姿勢といえるのだろうか。
◆政治に係わるテーマはとくに告知する努力を
今回、BPOへの野中広務氏の申立てが「放送人権委員会」になされたことに対する疑問は、委員会決定レポートのなかでも、少数意見として採り上げられていた。しかし今回の裁定は、我々一般視聴者及び国民にとって、下記の意味で、非常に有意義なものであったといえるだろう。
(1)「報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報はもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに、放送全体から受ける印象等を総合的に考慮」(BPO 委員会決定P14)されたこと。
(2)また(1)にそって、逐一、詳細に事実関係の確認が行われたこと。
(3)その結果として「勧告」という結果が出たこと。
ただし、BPOの役割は「番組を監視して罰するところではない」ものの、BPO裁定がどのように番組向上に反映されていくのかは、放送事業者が自主的に問題解決することに委ねられており、光市母子殺害事件に関する放送(BPO放送倫理委員会決定第04号)など、これまでの経緯を見ると、結果として、機能が十全に果たされているとはいえないのではないだろうか。
放送業界人にあっては性善説に基づいたルールでは、言論や表現の自由ばかりがひとり歩きしてしまい、存在意義や目的を達成できないに違いない。
とくに政治報道に関しては、国民の投票行動、そして国の未来を左右するという重大な意味をもっているはずだ。
委員会決定など政治や政治家が関係する案件については、当該番組中やゴールデンタイムのニュースなどで、一定内容を告知するという進言さえもできないのだろうか。あるいはBPO自身が番組をもち、YouTubeで流すなど、いくらでも方策はあるのではないだろうか。
せめて委員会決定など、BPO裁定後、当の放送局や番組が、その件にどのように対応し、また実行したかという「後追い調査」は、「放送倫理の高揚に寄与」することを担うBPOの責任の範疇ではないか。
報ステ及び古舘伊知郎が、委員会決定後、その言葉通り「真摯に受け止めまして、放送倫理、そして人権に十分に配慮して精進して」(古舘発言:報道ステーション2009.3.30)いるか、ぜひウオッチしてもらいたい。なぜなら我々の調査や実感では、実行に移されたことすらないからだ。
結局、放送倫理や番組向上は、我々国民一人ひとりが声をあげることに委ねられており、国民の知る権利に資するという意味では、BPO及び放送局、番組にあっては、いっそうの告知や広報、情報公開を求めたいと考える。
【参考資料】
*1 報道ステーション 過去のニュース(3月30日)
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/news/detail.php?news_id=6249
* テレビ朝日広報番組「はい! テレビ朝日です」
http://www.tv-asahi.co.jp/hai/
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コメント
もうTVは信じられませんね。
ここは本当に役立つサイトです。
ありがとうございます。
これからも応援します。
投稿: がんばれニッポン! | 2009年4月 6日 (月) 23時35分