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★ またまた古舘(1) BPO 報ステに重大な倫理違反勧告

お花見気分で浮かれようとしていたら、BPO(放送倫理・番組向上機構)が報道ステーションに重大な倫理違反勧告を行ったというニュースが飛び込んできた。

◆「見解」より重い「勧告」は4年ぶり

具体的には、7月23日の報道ステーション(テレビ朝日系列)で、「徳島・土地改良区横領事件報道(60歳の女性職員が6億円を横領した事件)」に際し、事件とは直接の関係はない全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長・野中弘務氏の映像を挿入し、またこれを受けて、キャスター古舘伊知郎氏が土地改良区の事業に対する補助金に対し「じゃぶじゃぶ使われているきらいがある」等とコメント。
野中弘務氏は「作為的編集がなされた」として、放送5日後にテレビ朝日に抗議したが、決着が得られなかったため、10月17日、BPO「放送と人権等権利に関する委員会」に名誉・信用の侵害を申立てたものだ。
BPO「放送と人権等権利に関する委員会(通称:放送人権委員会)」ではこれを審議し、3月30日、「見解」より重い「勧告」を4年ぶりに認定したわけだ。

◆A4/30ページの委員会レポートには真実がある

BPOの委員会では、申立て内容を詳細に検討した「決定」(*1)を約30Pのレポートにまとめ公表している。
具体的には、名誉毀損など「申立人に対する人身攻撃に及ぶものではない」と前置きしながらも、「被申立人(つまりテレビ朝日と報道ステーション)の本件放送当時の裏付け取材の範囲を超え、断定的に、一般の視聴者にすべての補助金が適正に使用されていないのではないかという認識を与えかねない不適切な表現と言わざるをえない」等、放送倫理違反があったと認定している。
レポートのなかで印象的だったのは、最高裁判決の引用を明示していたこと。
放送メディアの特徴を言い得ているので、長くなってしまうが引用してみよう。

      *     *      *     *

テレビジョン放送をされる報道番組においては、新聞記事等と異なり、視聴者は、音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであり、録画等の特別の方法を講じない限り、提供された情報の意味内容を十分に検討したり、再確認したりすることができないものであることからすると、<u>当該報道番組により摘示された事実がどのようなものであるかという点については、当該報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、(放送全体から受ける印象等は=筆者注)判断すべきとされるのである。(最高裁平成15年10月16日判決民集57巻9号1075頁)

出典:『権利侵害申立てに関する委員会決定「徳島・土地改良区横領事件報道」P9(BPO/2009年3月30日)


◆放送倫理違反は法律違反?

ちなみに、「放送倫理(違反)」は、放送倫理基本綱領など(*2)独自のルールに基づいたもので、いわゆる法制度ではない。
また、BPO裁定は、「放送事業者とっては、いわば最高裁判決のようなもの」といわれるものの、罰則や懲罰規定も見あたらず、強制&矯正力については、いささか疑問があると考えざるをえない。いわば、放送倫理を遵守し、裁定に従うかどうかは、マスコミ各社、またマスコミ人各自など(性善説に基づいた)現場の判断に委ねられざるをえないのではないか。
ということは……?

もちろん、言論と表現の自由を担保することは不可侵。
しかし、第三者の立場を貫いているとはいえ、NHKと民放連、民放各社によって出資・組織されたBPOの、せっかくのルールや裁定が、我々視聴者のため、いかに日々の放送・報道に反映されていくかが、本来の課題だろう。

◆ ぜったいに謝らないもうひとりの「いちろう」

我々からみれば、同じ報ステの、同じようなイメージ誘導画像・映像挿入手法を使ったことに関する申立て「かりゆし映像挿入疑惑」(*3)に関しては、我々の調査と比しても事実検証にさえ欠け、また業界団体の身内かばい的な、つまり、自浄力のなさを露呈したかのような裁定であったと明言できる。

ちなみに3月30日の報道ステーションでは、このBPO裁定に関し、10時22分ころ、約1分半だけのコーナーを設けた。詳しくは次回検証。


【出典・参考資料など】
*1)BPO 放送人権委員会 委員会決定(第39号pdfをダウンロード)
http://www.bpo.gr.jp/brc/decision/031-040/index.html
*2)BPO規約
http://www.bpo.gr.jp/bpo/overview/bpo.html
 放送倫理基本綱領
http://www.bpo.gr.jp/bpo/overview/general.html
*3)報ステとBPO:カテゴリーの「放送倫理・BPO」などを参照してください。
http://mediawatch.cocolog-nifty.com/blog/bpo/index.html

*その他参考記事
○時事ドットコム (2009/03/30-18:43)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a3%c2%a3%d0%a3%cf&k=200903/2009033000797
○東京新聞/2009年3月31日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009033102000045.html

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