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♪番外Essay:自給自足を夢想できる町:おぼろ大橋レポート(4)

道路特定財源問題で、菅直人氏の視察により一躍全国的に有名になったおぼろ大橋。おぼろ大橋のある八女市上陽町は、耳納山系のだんだん畑の広がる傾斜地に、人口約3900人が暮らす中山間の町。山間部に人口の約40%が暮らし、高冷地の気候を生かした特産の高級煎茶「八女茶」のほか、椎茸、いちごなどを栽培している。

取材の後、上陽町市街地にある「ホタルと石橋の館」売店に立ち寄ると、おばあちゃんたちの名前のついた産物が並んでいる。米、古代米、もち米、あわなどの穀類、あずきや金時豆などの豆類、里芋などの芋類、大根や蕪などの根菜、菜の花やほうれんそうなどの青もの、つくしなどの山菜、ほかにしめじや赤唐辛子など。干し筍や椎茸、切り干し大根などの乾物も、ぜんぶ上陽町産でしかも手作り。ほかに、手作り味噌や漬物、おかず味噌、ざぼんの砂糖漬け、人気の木綿豆腐も。醤油は隣の黒川産。取材中、ずっとだんだん畑を眺めて移動していたこともあり、その種類の多さ、豊かさに正直なところ驚いてしまった。

そういえば山間地の斜面には、筍の畑(斜面を整地して規則正しく竹がならんでいる)も見かけた。また久間一正さん(お茶農家とおぼろ夢茶房経営)から「昔は肉牛もやっていた」と伺っていたので、市街地の「肉の山口」が、自家牧場で飼育する生産直売と聞いても驚くことはなかった。
我々の取材時期は、折しも中国製毒入りギョウザが世間を賑わせていた時期。食料自給率があらためて脚光を浴びるなか、牛嶋元町長の「山奥の一反二反の田畑はいらないのか」の言葉は強烈に胸に残ることになった。
また、旧道をたどって久留米市に出ると、いきなり我々には馴染み深い大都会が開けた。久間さんが「こんな近くに消費地があるのに……」とおっしゃっていた意味を思い起こすのだった。

医療の格差(救急搬送路の確保)、教育の格差(通学路の確保)、職業の格差(通勤路の確保)の解消を目指した道路計画は、集落に暮らす人の利益ばかりでなく、実は、久留米市という「都市」へ農産物の供給をもたらすほか、食育や体験など、豊かな自然環境が、まるごと都会の子どもたちの田舎になりうるという、もうひとつの恵みの側面をもっていた。
帰りの道すがら、農家レストランにメニュー提案するとしたら、どんなメニューがいいか(肉も地産しているから、金時豆のトマト煮込みや、ゆず胡椒風味サラダなど洋風もいいのではないか……)と考えつつ、いつのまにか自給自足の町を夢想していることに気づいたのだった。

さらに。
おぼろ夢茶房は、久間さんご自身が所有する山から切り出した木材でつくられた建物であったことを思い出した。これだけの中山間地だから、衰退したとはいえ林業も盛んな町。間伐材はバイオマスエネルギーになるだろうし、おぼろ大橋のたもとにある交流施設「ふるさとわらべ館」には、その立地や環境を活かした風力発電・ソーラーパネルもあった。エネルギーまでも地産地消できる可能性さえ秘めているのではないか。
日本という国がもっているこんな「宝」「底力」を、救急搬送に不安をもつ高齢者だけに委ねていていいのだろうか。

*スチール写真を掲載したので、こちらもご覧ください。

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