■地方自治情報はネタもとにあたれ
このところ、地方自治がマスメディアに採り上げられることが多くなったように思う。6月14日、31歳という最年少で当選した熊谷俊人氏の市長選もTVのニュースワイドの話題になっていたし、宮崎県知事や大阪府知事に加え、千葉県知事もなにかと露出度が高くなっている。「地方から国を変える」気運の高まりは大歓迎だが、気になることもある。
つまり、マスメディアの記者や制作者などによって「なにが」選ばれ「どう」伝えられるかだ。とくに新聞メディア報道は、「だれ」が発信しているのかあえて隠すという「匿名性」をもっているから、なおさらややこしい。こういった場合に我々がまず行なうのは、ネタモトにあたるという鉄則だ。メディアミックス時代のいま、我々市民・国民は、記者クラブには入れずとも、たいていの報道発表資料はネットを通じて入手できる。国や政党、自治体でも充実したホームページをもっているし、内容も多岐にわたっている。マスメディア記者など発信者のフィルターを通さずに、自分の目と耳と頭で情報をとらえる機会が与えられているわけだ。
■悪意に満ちた千葉県「情報隠し」報道
そんななかネット配信で「森田知事会見動画、尻切れ 政治資金やパチンコはカット 県HP /千葉県」という朝日新聞の記事(2009年5月16日/ちば首都圏版=資料1=pdf)が目にとまった。ネット配信期限が切れているので、前文を紹介すると……
* * * *
県の運営するホームページ(HP)で、4月30日と今月14日にあった森田健作知事の定例会見の動画が会見途中で終了している。就任直後の会見は冒頭から終了まで放送した。しかし、今回は政治資金の問題や知事が過去に主演したドラマをテーマとしたパチンコ台についての質疑部分が流れていない。県は「サーバーの容量の問題」としているが、知事の「マイナスイメージ」と取られかねない質疑のカットは「情報隠し」との批判を招きそうだ。
(安原裕人)
* * * *
「情報隠し」という強い表現に、(市民・国民の情報収集にとって)ゆゆしき事態か……と、同日の「知事定例記者会見概要」(テキスト版=資料2)を確認してみたところ、「おれは男だ」をキャラクター化したパチンコ台についての質疑応答は4月30日分に、ちゃんと記載されていた。
* * * *
(記者) 知事がメーンキャラクターのパチンコ台があるそうですが、それに関して、いつ依頼を受けて、どのような意図でオーケーをされたのか、伺いたいと思います。
(知事)それは3年前、これはサンミュージックプロダクション、私のプロダクションです。今、韓流も含めて、いろんなドラマだとか、いろんな人がパチンコの台でこういうのがあると、そういう話が来ました。ただ、そのときは森田健作というよりも、あのころの「おれは男だ」というドラマでやりたいんだと、そういう話をプロダクション側が受けたのです。それで、私もそれはいいんじゃないのと。
実は、パチンコ台が出る予定だったのが1年前だったのです。ところが、いろいろあって、今というか、もうそろそろかなと、そのように思っております。
出典:千葉県HP 知事定例記者会見 会見録(2009年4月30日)より
* * * *
テキスト版の会見録で、情報公開されているものが「情報隠し」にあたるはずがないだろう。いにしえのドラマのパチンコ台化は、知事選以前の芸能活動へのオファーであったことやサンミュージックプロダクションが権利主体であることも述べられている。また、16日の政治資金規制法に関する質疑も同様。(森田知事の政治資金管理団体の収支報告書のことだから)事務所に確認して答えると応じている。(資料2)
■芸能プロによるパチンコ台は県政……?
知事の会見動画や会見録などを確認して、気づいたことがある。それは記者会見に参加しているマスコミ各社のうち、朝日新聞の記事を書いたY記者と、パチンコ台についての質問をした読売新聞のH記者の質疑応答が、突出して、トンチンカンであることだ(資料3)。
いうまでもなく、県知事の記者会見は、県政についての発表と質疑応答を行なうために開かれている。4月16日を例にとれば、この日の会見テーマは「八都県市首脳会議の千葉県提案(東京湾アクアラインの値下げ)について」や「防災誌「関東大震災」〜千葉県の被害地震から学ぶ震災への備え〜の発刊について」など4項目。いかに彼らの質問がテーマと乖離しているか判るだろう。
また、朝日新聞記事をみる限り、そういった質問は、あらかじめ意図されている可能性も否定できない。記事中ではテキストに掲載されている事実は隠蔽され、「情報隠しという批判」や「マイナスイメージ」(前出記事)を作り出すことが目的なのではないかと勘ぐりたくもなるのだ。付け加えれば用意周到に「批判を招きそうだ」という、断言を避けた、誰も責任を問われないような記述で締めくくっている。実際、いくつかのブログや掲示板サイト、ネットニュースサイトでは、「動画カット」や「情報隠し」の部分のみが一人歩きを始めている。まさに記者の意図のとおりに世論が動いているようにも見えるのだ。
新聞をはじめとするメディアには、「権力のウオッチドック」としての役割があるといわれる。もちろん表現の自由もあるだろう。それにしても……正確さと品格に欠いた記事に翻弄されるのは、メディアの受け手である我々自身であるのだ。
■ 新聞記者の役割と品格を問い直す
メディアにはおのずと媒体特性というものがある。しかし、パチンコ台も政治資金問題も、いずれも定例知事会見に参加する新聞社に相応しいテーマとは考えにくい。
政治資金の問題であれば事務所(政治資金管理団体)に取材すればよいし、タレント活動についてであれば、所属芸能プロダクションに取材すればよいだろう。素人見では、こういった話題はたいてい、週刊誌にレポート記事が発表され、TVのニュースワイドなどが後追い企画を報じたり、月刊誌で議論されるような類(たぐい)のものだと思えるのだが、どうだろうか。
新聞人は「正確と公正」と並び「品格と節度」が求められているというが(新聞倫理要綱:資料4)、本来のテーマからはずれた週刊誌的な質疑及び結果としての記事は、記者クラブという特権をもった大マスコミの記者がほんとうに「この場で」なすべきことだったのか。以下の政治報道についての記述は、国政を県政に読み替えれば、明快な回答を示している。
「政治報道とは何か。(中略)
簡単に定義すれば、憲法によって保障されている議会制民主主義の下、主権者である国民が選挙で選んだ国会議員と、国会議員などの政治家が構成する政党、内閣の下にある行政機関が、国会審議などを通じて、何を決めようとしているのか、あるいは、何を決めたかという事実を、早く正確に伝え、同時にそれが、日本の外交・内政に、主権者たる国民に、どのような影響を与えるのか、わかりやすく解説していく、ということだろう」
[日本評論社/浜田純一他編/新訂『新聞学』/第5章主要な報道分野とジャーナリズムの課題(西野秀):資料5より抜粋]
一つの記事やニュースについて、ネタモトを確認し、調べるには大変な労力がかかる。しかしときには、当事者の情報発信=ネタモトをのぞいてほしい。あるいは、大マスコミの記者たちも、高邁な倫理観に反してこの程度であることを肝に銘じ、日々のニュースに接するべきだという教訓だけは生かしてほしい。
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TVのワイドショーをつけっ放しでPCに向かっていたら、我々が白鳥大橋レポートのために滞在した町、室蘭市中央地区が「倒壊寸前の廃屋のまち」として話題になっていた。室蘭市の中央地区は、昭和40年代後半までは、「人の肩にぶつからずに歩けないくらい」賑わったという(元)歓楽街だが、いまや見る影もない。日中でも、夜の8時すぎでも、一人も見かけない瞬間があったくらいなのだ。
我々の取材中にも、(元)目抜き通りの交差点の角にある(元)拓銀支店の建物が、封鎖されたまま放置されているのを目の当たりにしたし、「大地震でもあったら一巻の終わり」といった風情の廃屋を何軒も見かけて恐怖を覚えた。無人と思われるビルや商店、住宅は、数しれない。
この廃墟のまちへとつなげるために建設されたのが、かの白鳥大橋(総工費1152億円)。その景観のあまりの落差にただただ唖然とするばかりだったことは、映像からくみ取っていただけるだろうか。
ワイドショーの番組内では、各地で問題となっている「町」の廃墟問題について、コメンテーターらは、いつものように、国や政権政党の責任を連呼する。が、シャッター通り商店街だけでなく、そのまちから車で2〜3分の周辺(=白鳥大橋)についてもレポートし、真の問題点を浮き彫りにしてほしい。
ちなみにこの番組では、間髪をあけず別コーナーで、政界を賑わす「2羽の鳩」(鳩山由紀夫・鳩山邦夫)の生い立ちやいきさつについてレポート。もちろん政権政党に批判的な視点を絡めながら、である。彼ら(制作・発信側)には一つの矛盾もないらしい。
[参考資料]
○札幌TV放送
http://www.stv.ne.jp/tv/dnews/past/index.html?idno=20090604155405
○室蘭民報
http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2009/05/28/20090528m_03.html
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BPOがテレビ朝日へ重大な放送倫理違反を勧告したことに対し、当の報道ステーション番組中では一般視聴者へ説明がどうなされたのか……。わずか1分半という短時間だったから、録画から文字おこしをしてみた。
◆ 新聞社のネットニュースと大差ない内容
○河野明子
BPO放送倫理番組向上機構の放送人権委員会は、テレビ朝日に対し、報道ステーションの土地改良区と横領事件に関する放送の中で、名誉毀損をきたしかねない重大な放送倫理違反があったとして、今後は放送倫理や人権にいっそう配慮するように勧告しました。
○挿入VTR+「テロップ」
・報道ステーション「『徳島6億円横領事件』報道に関連し、全土連や土地改良事業の仕組みなどを放送」
・ 野中弘務 元官房長官(全土連会長)「あたかも政治力で膨大かつ不要ともいえる事業を持ってきたかのような報道だ」
・BPO放送人権委員会の勧告「放送は野中氏に対する名誉毀損には当たらないが──」
○ 河野明子
番組では去年7月に徳島県で起きた「6億円横領事件」に関連して全土連、全国土地改良事業団体連合会をとりあげ、土地改良事業の仕組みなどについて放送しました。
これに対し、全土連会長の野中広務元官房長官が「あたかも政治力で膨大かつ不要ともいえる事業を持ってきたかのような報道だ」として、BPOに名誉と信用の回復などを訴えて申し立てていました。
BPOの放送人権委員会は、まず、「放送は野中氏に対する名誉毀損には当たらないが、全体の構成やキャスターコメントなどを総合的に考慮すると、名誉毀損をきたしかねない重大な放送倫理違反があった」とテレビ朝日に勧告しました。また委員会決定では「真実性の証明がない」などとして、名誉毀損に該当するとの少数意見も付け加えられています。
○古舘伊知郎
報道ステーションでは、この委員会の決定内容というものを真摯に受け止めまして、放送倫理、そして人権に十分に配慮して精進していくつもりであります。
*出典:報道ステーション(テレビ朝日/2009.3.30 22:26:22〜22:27:56)
◆ 当の報ステでも一般ニュース扱い
翌日の報道ステーションの録画も確認したが勧告に一切触れられることもなく、番組がこの件にふれたのはこれだけ。BPO勧告に対する対応というよりも、ただのニュースとして扱っているような印象で、新聞社から配信されるネットニュース以下の内容といわざるをえない。またどのように受け止め、配慮していくのかという具体的な姿勢が示されることすらないのもこれまで通りだ。
放送倫理規約にある「民主主義の精神にのっとり、放送の公共性を重んじ、法と秩序を守り、基本的人権を尊重し、国民の知る権利に応えて、言論・表現の自由を守る」という観点からみても、あまりにおそまつで、視聴者及び国民を愚弄した内容であると感じた。
報道ステーションのホームページではこの件に関し、実際、「過去のニュース」の項で扱っているだけ。またテレビ朝日では、4月5日(日)午前4時50分〜の「はい! テレビ朝日です」(広報番組)で、認定内容を放送することを明らかにしている。が、早朝という放送時間設定も含め、「真摯に受け止めている」姿勢といえるのだろうか。
◆政治に係わるテーマはとくに告知する努力を
今回、BPOへの野中広務氏の申立てが「放送人権委員会」になされたことに対する疑問は、委員会決定レポートのなかでも、少数意見として採り上げられていた。しかし今回の裁定は、我々一般視聴者及び国民にとって、下記の意味で、非常に有意義なものであったといえるだろう。
(1)「報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報はもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに、放送全体から受ける印象等を総合的に考慮」(BPO 委員会決定P14)されたこと。
(2)また(1)にそって、逐一、詳細に事実関係の確認が行われたこと。
(3)その結果として「勧告」という結果が出たこと。
ただし、BPOの役割は「番組を監視して罰するところではない」ものの、BPO裁定がどのように番組向上に反映されていくのかは、放送事業者が自主的に問題解決することに委ねられており、光市母子殺害事件に関する放送(BPO放送倫理委員会決定第04号)など、これまでの経緯を見ると、結果として、機能が十全に果たされているとはいえないのではないだろうか。
放送業界人にあっては性善説に基づいたルールでは、言論や表現の自由ばかりがひとり歩きしてしまい、存在意義や目的を達成できないに違いない。
とくに政治報道に関しては、国民の投票行動、そして国の未来を左右するという重大な意味をもっているはずだ。
委員会決定など政治や政治家が関係する案件については、当該番組中やゴールデンタイムのニュースなどで、一定内容を告知するという進言さえもできないのだろうか。あるいはBPO自身が番組をもち、YouTubeで流すなど、いくらでも方策はあるのではないだろうか。
せめて委員会決定など、BPO裁定後、当の放送局や番組が、その件にどのように対応し、また実行したかという「後追い調査」は、「放送倫理の高揚に寄与」することを担うBPOの責任の範疇ではないか。
報ステ及び古舘伊知郎が、委員会決定後、その言葉通り「真摯に受け止めまして、放送倫理、そして人権に十分に配慮して精進して」(古舘発言:報道ステーション2009.3.30)いるか、ぜひウオッチしてもらいたい。なぜなら我々の調査や実感では、実行に移されたことすらないからだ。
結局、放送倫理や番組向上は、我々国民一人ひとりが声をあげることに委ねられており、国民の知る権利に資するという意味では、BPO及び放送局、番組にあっては、いっそうの告知や広報、情報公開を求めたいと考える。
【参考資料】
*1 報道ステーション 過去のニュース(3月30日)
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/news/detail.php?news_id=6249
* テレビ朝日広報番組「はい! テレビ朝日です」
http://www.tv-asahi.co.jp/hai/
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お花見気分で浮かれようとしていたら、BPO(放送倫理・番組向上機構)が報道ステーションに重大な倫理違反勧告を行ったというニュースが飛び込んできた。
◆「見解」より重い「勧告」は4年ぶり
具体的には、7月23日の報道ステーション(テレビ朝日系列)で、「徳島・土地改良区横領事件報道(60歳の女性職員が6億円を横領した事件)」に際し、事件とは直接の関係はない全国土地改良事業団体連合会(全土連)の会長・野中弘務氏の映像を挿入し、またこれを受けて、キャスター古舘伊知郎氏が土地改良区の事業に対する補助金に対し「じゃぶじゃぶ使われているきらいがある」等とコメント。
野中弘務氏は「作為的編集がなされた」として、放送5日後にテレビ朝日に抗議したが、決着が得られなかったため、10月17日、BPO「放送と人権等権利に関する委員会」に名誉・信用の侵害を申立てたものだ。
BPO「放送と人権等権利に関する委員会(通称:放送人権委員会)」ではこれを審議し、3月30日、「見解」より重い「勧告」を4年ぶりに認定したわけだ。
◆A4/30ページの委員会レポートには真実がある
BPOの委員会では、申立て内容を詳細に検討した「決定」(*1)を約30Pのレポートにまとめ公表している。
具体的には、名誉毀損など「申立人に対する人身攻撃に及ぶものではない」と前置きしながらも、「被申立人(つまりテレビ朝日と報道ステーション)の本件放送当時の裏付け取材の範囲を超え、断定的に、一般の視聴者にすべての補助金が適正に使用されていないのではないかという認識を与えかねない不適切な表現と言わざるをえない」等、放送倫理違反があったと認定している。
レポートのなかで印象的だったのは、最高裁判決の引用を明示していたこと。
放送メディアの特徴を言い得ているので、長くなってしまうが引用してみよう。
* * * *
テレビジョン放送をされる報道番組においては、新聞記事等と異なり、視聴者は、音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるのであり、録画等の特別の方法を講じない限り、提供された情報の意味内容を十分に検討したり、再確認したりすることができないものであることからすると、<u>当該報道番組により摘示された事実がどのようなものであるかという点については、当該報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、(放送全体から受ける印象等は=筆者注)判断すべきとされるのである。(最高裁平成15年10月16日判決民集57巻9号1075頁)
出典:『権利侵害申立てに関する委員会決定「徳島・土地改良区横領事件報道」P9(BPO/2009年3月30日)
◆放送倫理違反は法律違反?
ちなみに、「放送倫理(違反)」は、放送倫理基本綱領など(*2)独自のルールに基づいたもので、いわゆる法制度ではない。
また、BPO裁定は、「放送事業者とっては、いわば最高裁判決のようなもの」といわれるものの、罰則や懲罰規定も見あたらず、強制&矯正力については、いささか疑問があると考えざるをえない。いわば、放送倫理を遵守し、裁定に従うかどうかは、マスコミ各社、またマスコミ人各自など(性善説に基づいた)現場の判断に委ねられざるをえないのではないか。
ということは……?
もちろん、言論と表現の自由を担保することは不可侵。
しかし、第三者の立場を貫いているとはいえ、NHKと民放連、民放各社によって出資・組織されたBPOの、せっかくのルールや裁定が、我々視聴者のため、いかに日々の放送・報道に反映されていくかが、本来の課題だろう。
◆ ぜったいに謝らないもうひとりの「いちろう」
我々からみれば、同じ報ステの、同じようなイメージ誘導画像・映像挿入手法を使ったことに関する申立て「かりゆし映像挿入疑惑」(*3)に関しては、我々の調査と比しても事実検証にさえ欠け、また業界団体の身内かばい的な、つまり、自浄力のなさを露呈したかのような裁定であったと明言できる。
ちなみに3月30日の報道ステーションでは、このBPO裁定に関し、10時22分ころ、約1分半だけのコーナーを設けた。詳しくは次回検証。
【出典・参考資料など】
*1)BPO 放送人権委員会 委員会決定(第39号pdfをダウンロード)
http://www.bpo.gr.jp/brc/decision/031-040/index.html
*2)BPO規約
http://www.bpo.gr.jp/bpo/overview/bpo.html
放送倫理基本綱領
http://www.bpo.gr.jp/bpo/overview/general.html
*3)報ステとBPO:カテゴリーの「放送倫理・BPO」などを参照してください。
http://mediawatch.cocolog-nifty.com/blog/bpo/index.html
*その他参考記事
○時事ドットコム (2009/03/30-18:43)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a3%c2%a3%d0%a3%cf&k=200903/2009033000797
○東京新聞/2009年3月31日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009033102000045.html
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去る9月17日、(社)日本経済団体連合会(以下=日本経団連)が、解散・総選挙をにらみ、例年の発表を前倒しして「2008年政策評価」を発表した。翌18日の朝刊には下記のような見出しで紹介された。
「経団連政策評価:自民、10項目で『A』 民主に採点辛く」
(毎日新聞社 東京朝刊 8頁 経済面 全428字)
「政策評価は自民アップ、民主ダウン 経団連」
(朝日新聞東京朝刊6頁)
「民主政策評価 経済界厳しく 政局重視の戦略を批判」
(産経新聞 大阪朝刊 10頁 第2経済面)
日本経団連といえば、東証第一部上場企業を中心に構成される経済3団体の一つ。「経済・産業・社会労働分野について、経済界の意見をとりまとめ、政治・行政に実現を働きかけるなどの活動」(デジタル大辞林)を行い、政界・財界に大きな影響力をもつ組織といわれ、その会長(キヤノン会長御手洗冨士夫氏)は、TVの政治関連のニュースでも、しばしば登場して政策提言や談話などを発表している。
が、年に1度発表される政策評価については、新聞でも経済面などで扱われるにとどまり、民放のTVニュースなどでは取り上げらなかった。
なぜか──。財界が考える政策評価は国民には無縁と考えるのか、世間で拮抗する政党支持率と異なる結果を報道することは、意味がないと考えるのか。
我々報道とメディアを考える会では、評価の視点軸をふまえた上で、こういった政策ごとに対する評価は他に見あたらず、またエンターテイメント化するTVニュースの内容に比して、次の投票行動のための判断材料の一つになると考えるのだが、どうだろうか。
◆日本経団連「政策評価」とは何か
日本経団連の政策評価とは、「政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性向上の観点から、企業の社会的責任の一端としての重要な社会貢献として、企業・団体による政党の政治資金団体への寄付を促進」する立場から、政党(自民党・民主党)を対象に、「総評」「優先政策事項に照らした評価」「包括的事項の論評」の3部構成で評価するもの。日本経団連では、会員企業に対し、この政策評価を参考に「自主的に政治寄付を実施することを申し合わせている」ものだ(「 」内は、日本経団連HP 「2008年政策評価の発表にあたって」より)。
「優先政策事項」として、「税・財政改革」「社会保障・少子化対策」「地球温暖化対策」「教育改革」「外交・安全保障」など10項目が挙げられ、それぞれ(日本経団連政策との)「合致度」、「取組み」、自民党については「実績」がA〜Eの5段階で「推進・逆行」を評価するもの。また特記事項として、評価の理由が個々に記載されている。
2008年度の評価(概要)については、下記のとおり。新聞などで指摘されたように、民主党については、落第点ともいえるD評価が昨年の4項目から6項目に増えるなど評価が低下。総評では「民主党の主要政策には、財源の根拠が不透明で実現には問題があるものが多い。」「法案や国会同意人事への対応を見ても、政局を重視したという印象は否めない。」「概して、政策で切磋琢磨するというよりは党利党略優先の行動が目立ち、参院第一党の責任政党としての姿を示せなかった」などだった。
ちなみに自由民主党については全般に高評価だったものの、「社会保障・少子化」、「雇用・労働」「教育改革」はC評価。総評でも「『ねじれ国会』の下でも、政治がタイムリーに意志決定できる仕組みの構築が大きな課題」と指摘されている。
* * *
■日本経団連 2008年政策評価
<自民党> <民主党>
合致度 取組 実績 合致度 取組 実績
税・財政改革 A B B C D↓ −
社会保障・少子化 B B C C↓ C −
規制改革 B B B B C −
イノベーション推進 A A B B B −
エネルギー・環境 A A↑ B C D −
教育改革 A B C↓ B B −
雇用・労働 C↓ C C D D −
道州制 A A B C C −
通商政策 A B B C D↓ −
外交・安全保障 A B B C D −
(日本経団連HP「2008年政策評価」より作成)
◆ 民主岡田氏の政策評価批判
日本経団連の政策評価と企業献金との関係について、民主党衆議院議員岡田克也氏は、昨年の発表時に、自身のブログ「直球、健在。」のなかで、政党通信簿といわれる政策評価について言及している。
* * *
「まず、この仕組みそのものですけれども、基本的にかなり危ういものだということは言わなければいけないと思います。
つまり、経団連の政策を示して、それについての合致度、政党の政策がどうなのかAからDまで評価をする。その評価を今回のように公表して、そして会員の企業に『自主的に』ということは言いつつも献金を奨励する。
これは一歩間違えると贈収賄の関係になりかねない、そういうかなり際どい問題です。
私は、経団連という1つの経済界の団体が、そういう形で各企業の政党に対する献金について、いわば介入をするというやり方が、決して良いとは思わないということをまず申し上げておきたいと思います。」
(岡田かつや公式ブログ「直球、健在。」2007年11月13日より)
* * *
多少乱暴な論法であるものの岡田氏の指摘には一理あり、また日本経団連という大企業の「視点」であること、また「自主的」に判断するための材料であることは、もとより経団連自身が謳っていることである。また岡田氏の指摘はともかく、民主党に献金している経団連会員企業があることも事実だ。
さて、我々有権者はこの日本経団連「政策評価」をどう読むか。
きょう(10月7日)、麻生太郎首相が衆院予算委員会で総選挙の争点として挙げた国際貢献(外交・安全保障)の取り組みでは、自民党はB。民主党はDで、日米同盟を外交・安全保障政策の基軸と位置づけながら、08年通常国会で在日米軍への「思いやり予算」に反対、参院で不承認としたこと。また国際社会と一致団結してテロ根絶に取り組むとしながら、07年臨時国会で新テロ特措法を参院で否決したことなど、政策と取り組みの矛盾が指摘されている。
政策自体への賛否はそれぞれの考えだが、言行一致かどうかをも含め、大マスコミがあまり取り上げないなか、自分なりの視点で経団連の政策評価の細目について個々に確認し、政権政党を選ぶ時期選挙のための「判断材料のひとつ」として、「自主的」に深読みしようではないか。
そこらの政治バラエティ番組よりも詳細で具体的であることは保証する。
★ 経団連 政策評価2008年
(ページの下の方に、自民党・民主党の評価pdfがありダウンロードできる)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/065.html
★民主党衆議院議員 岡田かつや公式ブログ「直球、健在。」
http://katsuya.weblogs.jp/blog/2007/11/post_d9a7.html
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6月4日、民主党小沢一郎代表が、『週刊現代』(講談社)に敗訴した、東京高裁(つまり2審)の判決文を見る機会を得た。
控訴人や非控訴人、弁護人の名がずらりと並ぶ1ページに続く、2ページの「主文」を見て、苦笑してしまった。
曰く「本件控訴をいずれも棄却する」
曰く「控訴費用は控訴人らの負担とする」
という2行。控訴した小澤一郎(通称:小沢一郎)氏らの「全面敗訴」であることが、あまりにも明確に、短文で提示されていたからだ。
立場を変えて小澤一郎氏側の立場に立って考えて見れば、勝てないまでも落としどころがあると読んで始めた裁判なのに、「けんもほろろ」な判決だったことが想像できる。
■控訴内容は小澤氏と民主党合計で6000万円と金利
控訴内容は、
1) 小澤氏(個人)に対し、3000万円と、当該記事の雑誌発行日(2006年5月23日)から支払い済みまで年5分の利息を支払え。
2) 民主党に対し、3000万円と、当該記事の雑誌発行日(2006年5月23日)から支払い済みまで年5分の利息を支払え。
3) 控訴人が用意し、条件を示した謝罪広告を、週刊現代のほか、朝日、読売、毎日の各新聞に掲載せよ。
……というもの。
つまり、名誉毀損により、小澤氏個人(3000万円+利息)、民主党(3000万円+利息)と謝罪広告を求めていたものが、東京高裁へ上訴までしたのに、あっさり棄却されたわけだ。
■ 事実をもとにした意見は名誉毀損ではない
判決文のうち、「事実及び理由」では、週刊現代の記事や広告等の内容を子細にわたり点検・検討するもので、記事等から、知っていることがほとんどだった。
ただ、注目したのは「事案の概要」の2「記事による名誉毀損における違法性及び故意過失」。我々なりに「翻訳」すると以下のようになる。
● 事実であることの証明がなくても、執筆者が事実と信じるにたる理由があれば、故意や過失で名誉毀損したとはいえない。
●事実をもとに、公共の利害や、公益を目的に執筆(表現)したものであれば、故意または過失で、名誉毀損したことに当たらない。
●事実を前提とした意見や論評によって名誉毀損にあたるかどうかは、読者の判断にまかせられる性質のもの。
──というもの。
週刊現代の記事の、詳細な調査や多面的な取材を読んで、我々が感じたことと遠くない。つまり、きちんと調べ、また反対意見を含めて構成している事実に基づいた記事には、ある種のジャーナリストとしての「誠実さ」が感じられ、それを名誉毀損で訴えるのはおかど違いでは?ということだ。
尚、小沢氏側は、判決に不満であれば、判決から2週間以内に上告できたはずだが、上告は見送った。つまり判決を受け入れたということだ。
■ なぜ、首相にならんとする人物の裁判が報道されない?
それにしても、なぜ、一国の総理にならんとする人物=小沢一郎(小澤一郎)氏の裁判について、テレビや主要新聞(共同通信と産経新聞はのぞく)は報じなかったのだろう。私たちは「国民の知る権利に奉仕する」というマス・メディアの使命・役割を信じている。いや、信じたい。
調べれば調べるほどに、なぜ報道されないのかに立ち帰ってゆく。
ネットのブログ等では、さまざまな理由が挙げられている。しかしそれらの大半は、無責任な「床屋政談」であって、我々がその信憑性を確認することが難しい。
ちなみに、平成19年2月20日の事務所費の公開に当たっての記者会見で小沢一郎民主党代表は、「いずれにしろ、報道機関の皆様には、いかなる場合においても、私の意志がきちんと実現されるよう、今後、厳しく監視していただきたく宜しくお願いいたします」と締めくくった。
この「お願い」に応えているのは、週刊現代や週刊新潮などの一部の週刊誌が主だ。小沢一郎氏自身が、そう要請しているのに、なぜ、TV局や朝日や毎日、読売新聞などの報道機関は動かないのだろう。
あまりの迷宮と問題の根の深さに、疲労が募るばかりだ。
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