後期高齢者医療制度

☆後日談:BPO=業界内の自浄力?ーー古舘vs自民党(5)

BPO(放送倫理・番組向上機構)のHP上に、報ステ・古舘の「よく笑っていますね」発言及び自民党の抗議に関する委員会の見解が出ていたので紹介する。
番組を逐一見直した我々の印象とは対局にある結論(審議の見送り)で、正直なところ、番組の録画を「(視聴者の立場で)見ていない」と感じた。

また、報ステ自体があいまいにしたことまで、ご丁寧に正当化の上塗りに一役買っている。
曰く(かりゆし映像の挿入は)
「関係がないとはいえない」
「アタマ撮りの映像を使用したことには理由がある」と。
しかし我々がとくに注目したのは、
(古舘氏の釈明によって)
「視聴者も正しく理解したと判断できる」
という文言だ。
ほんとうにあの釈明で、誰が、どのように、何を理解したといえるのだろう。

第三者性を謳いながらも、業界団体では、自浄力に期待できないということか。
いや、表現の自由を担保してゆくためには、自浄力こそが必要不可欠に違いない。
その意味で、我々「報道とメディアを考える会」では、一定の監視機関や権力による監視ではなく、BPOの活動に期待していることを申し添えよう。


<報道番組のキャスター・コメントに対する抗議>

報道番組の後期高齢者医療制度を取上げたコーナーで、自民党の幹部が談笑している映像を見たキャスターが「よく笑っていられますね」とコメントした。それに対して自民党から、その問題を議論しながら笑っていたわけではない、との抗議が局にあった事案。討議した結果、キャスターは印象を述べたものであるし、談笑している映像も放送前日に開催された役員連絡会冒頭のいわゆる「アタマ撮り」で、その役員連絡会では後期高齢者医療制度が話し合われているから、まったく関係のない映像を使用したとは言いがたい。更に、役員連絡会については会議が始まる冒頭、いわゆる「アタマ撮り」の取材しか許されていないので、直近の「アタマ撮り」の映像を使用したことにも理由があると判断できる。確かに、番組の作り方にも誤解を生まないように配慮すべき点があるが、それについては、5日後に、同番組で4分間弱にわたってキャスターにより説明がなされているので、視聴者も正しく理解したと判断できる。>以上の理由により、当委員会はこの事案を取上げないこととした。
(BPOホームページ 「第15回 放送倫理検証委員会」(2008年6月13日開催)議事録より)


追記
「報道とメディアを考える会」では、検証レポートなどを逐次BPOに送付している。今後は、委員や番組のスポンサー企業などにも個別に送付していく予定。

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★まんまとはめられた視聴者──古舘vs自民党(4)

古舘キャスターが、自民党の抗議に対して報道ステーションの番組内で「釈明」を行った翌日の6月10日、新聞各紙の朝刊の他、ネットニュースなどでも、採り上げられた。
「テレ朝 自民党抗議に釈明」(読売新聞)、「古舘キャスター『本意ではない』」(毎日新聞)のほか、日刊スポーツの文化・芸能面では、「古舘氏自民に謝罪なし」と、どの媒体も、謝罪ではなく、「釈明」でしかなかったことを明確にしている。日刊スポーツ等、釈明の文言を詳しく説明する記事もあったものの、「かりゆし画像」の取り違え(もしくは故意の挿入?)について言及しているものはなかった。つまり、報ステ・古舘氏の問題すり替え発言や意図にのせられた格好だった。

◆ 番組の思惑通りに「大人げない自民」へ非難が集中

これらマスメディアの影響もあってか、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の日記では、ニュースを題材に個人によって語られた「自民・古舘へ抗議問題」は、自民党への非難の方向に向かっているものが多くみられた。
例えばこんな論調──
「ムキになっている自民党はみっともない」
「こんなことで自民党が激怒して(党役員会の)無期限撮影禁止するなんて大人げなさすぎる」
「私は、この番組が公平で正確な報道をしている番組と思っていませんが、今回の件では、テレ朝を支持します。理由は後期高齢者制度を支持していないからです」
「庶民の苦しみを知ってか知らずか、テレビカメラの前でへらへら笑っているなんてひどい。古舘さんは人間らしく思います」
 極端なものになると、「言論弾圧」「言論封殺」などの激しい語調が踊っている。
 こういった見方は国民だけではなく報道機関のなかにもあったようだ。
 スポニチでは、「古舘氏に責任転嫁? 自民党テレ朝締め出し」のタイトルの記事中で、「過剰反応と言わざるを得ない。過去に遺恨があるテレビ朝日だから余計にムキになっているのでは。大人げない対応は国民に悪印象を与えるだけで逆効果だ」(Sponichi Annex/2008.06.07)と、政治評論家浅川博忠氏のコメントを紹介している。
 しかし。こういった自民批判のブログや記事のなかでは、かりゆし画像の「取り違え」もしくは「故意の挿入?」についての言及は、すっぽり抜け落ちている。
 感情的な論調が目立ち、報ステの「シカト作戦」に乗せられてしまったかのよう。繰り返しになるが、問題の核は、無関係の映像を挿入したことと、沈黙を経て問題発言へ続く「流れ」(演出)にある。

 ニュースを題材に書かれた大多数の日記やブログの論調を見て、ある種の恐怖を覚えたという人もあった。「恐怖感」は、自分の頭でジャッジする力を奪われた国民・視聴者があまりに多すぎることに対してのものだ。我々も同感である。

◆ 冷静な反応の市民に耳を傾ける

 一方、冷静な反応もなかったわけではない。
「私も長寿医療制度に反対。しかしそれとメディアの意識操作と洗脳は別物」
「古舘は、言い訳ばかりで何がいいたいのかわからない。印象操作は流してしまった。意図的に映像を使ったとはいえるはずないということか」
「わたしは後期高齢者(長寿医療)制度については再考の必要があると思っている。しかしテレ朝の行為は放送法違反」
「娯楽性を旨とする番組は国民の知る権利を著しく阻害している。番組の方にペナルティがかけられないのが不思議」
……等々。後期高齢者制度への賛否と番組の印象操作問題は別であることを明確に認識している。 
 また自民党の対応については……
「あそこまで印象で政治をかたる番組をつくられれば怒るのは当たり前。嘘を平気でたれ流すに等しい編集を平気でする訳だから」
「自民党を一般企業に置き換えれば、取材拒否は妥当。党内だけで国会ではないし、放送権を取り上げている訳じゃない」
 と、極めて理路整然と、現実を直視している。しかしこういった意見はむしろ少数派だったことを残念に思わざるをえない。

◆ あらためて報ステ・古舘の倫理を問う

 あるブロガーは、長寿医療制度に関し「誰が」「いくら」負担するかの議論では問題解決にならず、切迫した財政状況のなかで、医療費問題について根底から議論すべきと指摘。国のグランドデザインなど、議論のための材料を提供することなく、映像挿入による印象操作まで行うことに疑問を呈していた。
 我々「報道とメディアを考える会」でも、番組録画の再視聴や文字おこし、新聞などの媒体の報道を検証・確認するなかで、同じ結論に至った。
 つまり、「大人げない自民党」を演出することで、利するのは誰なのか……を冷静に考える必要がある。 
 名誉毀損にあたるかどうかは我々が判断するものではないが、少なくとも、「かりゆし談笑」映像と、明かにこの映像に被せた古舘らのコメントは、国民の立場のたった報道ではなく、実際に、国民の「知る権利」を阻害するものでしかない。また「釈明」報道によって映像問題を隠蔽し、視聴者の判断に任せるなどという「おためごかし」で「主張の上塗り」を繰り返したことは、さらに罪深い。

 自民党の抗議がなければニュースにもならず、我々でさえも「かりゆし談笑」が後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の会議時のものと、信じこまされた可能性が大きいことを、肝に銘じたい。
 報ステ・古舘と自民党、どちらが視聴者・国民の立場に立った情報を提供したかは、明白だろう。

◆古舘氏は、誰に奉仕しているのか?

 この連載についてメンバーで討議している最中、BPO(放送倫理・番組向上機構)から『BRC判断基準2008』が届いた。少しだけ紹介しよう。

■制作意図による事実の歪曲(Ⅰ企画・取材)
何らかのニュース性のある事件を契機に啓蒙的意図を持った番組を作ることは効果的であろうが、取り上げる事案がその制作意図にマッチするものであってはじめて効果があることであり、誤って制作意図にそぐわない事案を取り上げたときには、事案について正確を期そうとすれば、意に反して制作効果自体を減じることになるし、逆に制作意図に忠実であろうとすれば、意識するしないは別として、事実調査をおろそかにしたり、事実を歪曲することとなり、ひいては取り上げられた事案の当事者の名誉を毀損し、社会的評価を低下せしめ、その人権を侵害する結果を招くことになる。

■ 取材テープダイジェスト保存版による編集ミス(Ⅱ編集—1.事実の歪曲)
放送局は、番組の編集に当たり、事実を曲げないで報道する法律上の義務を負うものであり、素材テープのダイジェスト保存版から、さらに短縮編集するに当たっては、細心の注意を払って編集すべきであり、さらに編集されたVTRが、事実に即したものであるかについては、二重三重のチェック体制をとることが要請される
[関係資料]放送法第3条の2「国内放送の放送番組の編集等」3号「報道は事実をまげないですること」

 自民党では道路特定財源問題で、BPOに検証要請したことあるが、BPOではこの審議を見送った(詳しくは5月2日の当ブログを参照)。この経緯から今回は、放送局を構成員とするBPOへの通告ではなく、撮影のみの取材拒否という「自衛策」をとることにしたのではないかと想像できる。
 報道には「“国民の知る権利”に奉仕するという使命」があるとすれば、まさに放送法やBRC判断基準が示すように、「事実をまげないで」報道する倫理が確立できる別方策を検討するべき段階ではないのか。

それこそ古舘氏の口癖である「我々民間」では、ミスやトラブルが発覚した場合、以下のような対応をとる。
(1) 事実認識とすみやかな謝罪
(2) トラブルが発生した経緯や原因の徹底調査と公開
(3) 原因発生の分析に基づく対策を講じ、被害者に説明するとともに実行態勢を整える
(4) その他被害者(損害)に対する誠実な保障
以上の4点によって問題解決と再発防止を図り、顧客や社会の理解を得ながら、再生していくのだ。

 報道ステーションの「かりゆし談笑」映像のケースでは、(1)の事実認識に止まり、謝罪はもとより、トラブル発生までの経緯を、視聴者にも説明するに至っていない。連載の(2)で伝えた「厚生労働省の記者会見」画像の取り違えについても、謝罪はあったものの、「なぜこうした事態が起き」「今後、どう対策を講じるのか」についてはスルーだ。
 印象操作の直接の被害者である自民党ばかりでなく、私たち視聴者にも、謝罪と今後の再発防止策を提示し、徹底するのが報道の社会的責任からみても「スジ」ではないだろうか。

 我々は、番組録画等の検証を通し、報道番組の代表ともいえる「報道ステーション」(テレビ朝日)でさえ、このありさまであったことに、憤りを覚えるとともに、深い哀しみにとらわれてしまった。しかもテレ朝や報道ステーション・古舘氏の問題発言は、何度も繰り返され、見過ごされ、また再発の可能性のほうが大きい。
 狂騒するテレビ番組の煽情にのって、自民党をいたづらに非難しても、私たちの暮らしも、長寿医療制度も、よりよい方向に向かわない。
 冷静に事実を直視する、そのためのちから=メディアリテラシー力をつけようではないか。

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★主張のためなら別映像の挿入は正当——古舘vs自民党(3)

 6月9日(月)、報道ステーション(テレビ朝日)では、4日の放送で、自民党から抗議が来たことに対し、古舘氏自身が「テレビをご覧の皆様に説明したく、時間をください」と、釈明を行った。

◆ 「釈明」内容を振り返る

 約4分間に及んだ釈明では、まず、問題箇所のVTR映像(=自民党役員連絡会で、かりゆしウエアで各委員が談笑している)を提示。この映像には、「報道ステーション6月4日放送」のほか、以下の放送時のテロップが被せられている。
「——後期高齢者で国が算出
 驚きの数値7割が負担減」
「与党:9日参院で問責決議案可決の場合
 →衆院に新任決議案を提出
 →10日に可決成立の構え」
この後の古舘氏の発言を文字に起こししてみた。

       *       *       *

このVTRの後です。えースタジオに来てカメラが私を捉えて私は「よく笑っていられますね、えらい政治家の人たちは」と発言をしました。それに対して自民党から抗議が来たわけです。
え、確かに、今ご覧いただいた自民党の党役員連絡会の映像は放送の前日の模様であります。
そして、開会前の雑談風景であり、後期高齢者医療制度について話し合って笑っている映像ではありません。したがって、自民党はそれが名誉の毀損にあたるというふうに抗議をしているわけです。
もし、そのように受け取られた視聴者の皆様方がいらっしゃるとすれば、それは私の本意ではありません。

私が発言した意図というのは、今、国政全般にわたって政治家の人たちが、笑っていられる局面など何一つない、多くの国民を痛めつけるような結果、長きにわたる政治の無策、そして果たして本当に血の通った政策・施策を行っているのか、様々な問題に対して真摯に対応しようとしているのか、その1点を申しあげたかっただけであります……

       *       *       *

──というものだった。「釈明」の趣旨を整理してみた

(1) 発言の意図を説明しただけで、謝罪はない。
(2) 「かりゆし談笑」映像と「よく笑っていられますね」発言は本意ではなく、名誉毀損にあたるかどうかは、視聴者の判断。
(3) 関係のない映像を挿入したことは認めたが、これについて「間違い」で入れたという認識はない。
(4) 主張(=笑っている状況ではない)を説明するためには、別映像を挿入する手法は、「正当」という認識

我々の前回のレポートにある厚労省記者発表に関する「間違い画像」の時の「謝罪」と読み比べてほしい。前述の釈明のあと、古舘氏の発言は下記のように続く。

       *       *       *

 かくいう私も大変未熟です。この番組が始まって以来、多くの視聴者の皆様方からお叱りの言葉をいただき、それを糧に成長させてもらってきたと思っています。これからもそれで成長していくんだというふうに思っております。
 私たちメディアも確かに様々な反省点があります。大いにあります。しかしこの局面にあって政治も私たちメディアもここは一つになってですね、国民にとってまず必要不可欠な政策、具体的なアイディア、国の方向は何なんだということをですね、前向きに一緒になって考えていくべき局面ではないでしょうか。皆様方は、どうこれに対して考えますか。

       *       *       *

 古舘氏は、別映像挿入については多くを語らず、問題を政治局面にすり替え、判断を視聴者にゆだねることで、自らと番組の正当性を主張するに至った。
 古舘氏の発言にあるように、我々「報道とメディアを考える会」でも、現在は、「前向きに一緒になって考えていくべき局面」だと考える。
 しかし、別映像の挿入によって、一定の意図に沿った編集が日常的に行われていると考えれば、「政争の具を再生産」していることにほかならない。
 厚労省記者発表の画像の間違いについての古舘氏の謝罪を引用しよう。
「こういった基本的な間違いが度重なれば、これは、視聴者の皆様方を欺くことになってしまいます」
 テレビはつくづく怖いメディアだ。
 文字に起こせば判ることでも、市民の味方を演出した編集映像をたれ流すことで「かりゆし談笑」の件は隠蔽されてしまい、この後「大人げない自民党」のイメージが増幅されてゆくことになる。
 真に視聴者・国民へ判断材料を提供する報道姿勢はどこにもない。
 次回(最終回)は、ブログなど市民の反応について。

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★ウソの上塗りでも「バカな視聴者」は気づかない?——古舘vs自民党(2)

6月4日、報道ステーションの後期高齢者医療制度についての報道で、問題となった古舘発言(=「よく笑っていられますねえ」)の箇所以外にも、故意に世論誘導をしたと思われる画像を挿入した箇所がある。
自民党では、5日午後に、古舘氏の問題発言箇所を指摘。この日の夜の報道ステーションでは、厚生労働省記者発表画像の間違いについて、キャスター古舘氏によって、謝罪が行われた。
前日のVTRも再現した。
ところが──。
どうみても映像編集のマジック(割愛など)を利用して、謝罪というよりは、さらに報ステなりの主張や、古舘氏の「市民の味方」という正当性のアピールが主眼。謝罪と銘打ちながら、元々の作為を上塗りする作業を行っているとしか見えなかった。

前回と繰り返しになるが、4日の当該写真について録画の再生から解説すると……。
後期高齢者医療制度について、この日に厚生労働省から発表された「サンプル調査」についてのニュースの冒頭で、画面に大きく映し出されたの右上スチール写真(A)だ。
写真Aは、青いカーテンをバックに、男性3人が、下や横を向いたような絵柄で、なんとも申し訳なさそうというか、やる気がなさそうというか、記者団と目を合わせられないといった構図で、そこに赤地に白抜きの文字で大きく「7割の世帯が負担減」の文字が躍っている。
そして数秒後には、右上に縮小された3人写真A、左下には、同じ青いカーテンのバックで、左から、男・男・女・男の計4人が並んだスチール写真(B)が同時に掲載され「厚生労働省午後3時過ぎ」のキャプションもある。
つまり、厚労省スタッフの、人員・人数の異なる写真A・Bが2枚同時に映し出された。
問題となった3人写真Aは、古舘氏が5日の番組で「私どもが間違えて掲げてしまったこの写真は、同じ会場で直前に行われた厚生労働省内の人口動態調査に関するものでありました。」と釈明している。
つまり、ケアレス・ミスという主張。4人の写真Bは、ニュースのテーマである後期高齢者医療制度の調査に関する記者発表時のもので、こちらは正しい。
2枚が同画面にあるのだから、私たち視聴者には垂れ流しされた一瞬の映像であっても、制作・編集サイドの人間が見れば、「不自然さ」に気づかないはずはないだろう。
果たして、一定の意図なくして、こんな「ミス」ができるのだろうか。

また5日の「謝罪」時に再現した放送では、写真Aから「7割の世帯が負担減」の文字の部分は消え、写真A・Bが同時掲載された部分も、割愛されていた。
まるでケアレス・ミスを信じ込ませるために、不都合な部分を割愛したように見える。
さらにいえば、3人の写真Aだけをアップで繰り返すことで、後期高齢者医療制度に関する(報ステなりの主張に沿った)「イメージづくり(=世論誘導)」に拍車をかけることを意図したと考えられる。

5日の古舘氏の謝罪シーンをテープ起こししてみた。
「こういった基本的な間違いが度重なれば、これは、視聴者の皆様方を欺くことになってしまいます。皆様方の信頼なくして、番組などありえません。深く反省して精進したいと思います。申し訳ありませんでした」

たいへんにご立派で正論。
しかし、週明けの月曜日(9日)には、もう一度「画像挿入の間違い」を釈明することになる。ちなみに5日の段階では、「自民党からの抗議があった」という事実は伏せられている。
おそらく報道ステーションの制作サイドでは、放送当日、自民党からの抗議とかりゆし写真に関する間違いについては無視し、厚労省画像の部分のみ訂正・謝罪する申し合わせがあり、その線に沿った謝罪が行われたと推測できる。
またシカト……あるいはウソの上塗り?
すでに画像挿入の間違いを「度重ねて(古舘発言より)」いることを隠した報道ステーション。きっとこの件についても「シカト」するに違いない。

次回は、9日の古舘「釈明」と市民の反応について。

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どう見ても故意に入れた「かりゆし談笑」ーー古館vs自民党(1)

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ねじれ「問責」の陰で13重要法案可決!

6月11日、民主党・社民党・国民新党の3党が提出した福田首相に対する「問責決議案」は参議院本会議で野党の賛成多数で可決された。翌12日の新聞各紙(全国紙)では、それぞれに大きく扱われていたものの、「宝刀の重み消え形骸化」(朝日)、「民主『儀式』、自民は軽視」(毎日)、「色あせた最強カード」(読売)、「小沢氏の“挑発”不発」(産経)など、小沢氏の目論見は、おおむね不発に終わったという見方だ。
「福田康夫首相問責決議案可決」について、11日の「報道ステーション」(テレビ朝日)では、7分42秒、「NEWS23」(TBS)では、オープニング等を含み、6分53秒の時間を割いた(資料:「テレビブログ」より)。
「報道ステーション」では
  【発  言】民主党・簗瀬進参院国対委員長
  【会  見】民主党・小沢一郎代表、福田康夫首相
  【コメント】自民党・平沢勝栄議員
「NEWS23」では
  【発  言】民主党・鳩山由紀夫幹事長、簗瀬進参院国対委員長、福田康夫首相、自民党・吉村剛太郎参院政審会長、小泉純一郎元首相
  【会  見】民主党・小沢一郎代表、自民党・息吹文明幹事長
  【コメント】社民党・福島瑞穂党首
  【電話コメント】町村信孝官房長官
──という構成だった。
2大政党制が射程に入った衆院選を前に、視聴者のメディアリテラシーや有権者の投票行動に、どちらの番組が資するかを考えれば(この日の問責報道に限って言えば)、多様な立場の意見を採り上げていた方に軍配があがるだろう。

ところで、この2大ニュース番組を見ていて気がついたのが、同じ参議院本会議で13法案可決されたことについて、報道ステーションでは「オウム被害者救済法・成立」について触れただけで、他の法案には触れていなかったこと。NEWS23では、「改正少年法など13法案成立」のコーナーを設けて報じたほか、「有害サイト規制法案・成立」については、医師やデジタルコンテンツ制作会社、携帯・PCのプロバイダなどのコメントのほか、町村信孝官房長官の会見や民主党・玄葉光一議員の発言を盛り込むなど力の入ったものだった。

「ねじれ国会」のなか、問責決議案可決で国会審議が事実上止まることへの国民からの批判を回避するため、与野党一体となった「スピード可決」(「駆け込み処理」ともいう)。少年犯罪やペットフードの安全性、インターネットの有害サイト、アスベスト等、どれも昨今の社会問題や弱者救済の動き、世相や生活を反映した重要法案だ。番組制作者は、日々たくさんのニュースのなかから情報を取捨選択して番組を構成しなければならないことも、表現・編集の自由も理解している。しかし重要法案さえ割愛してしまう「報道姿勢」が闊歩していることには疑問を抱かざるをえない。
こうして2006年6月の「後期高齢者医療制度」成立も看過されてきたことを、私たちは忘れてはならないだろう。

※ ちなみに6月11日参議院本会議でスピード可決された「主な法案」は、以下の通り(順不同・法律名は通称等)。
【議員立法】
オウム真理教被害者救済法/青少年有害サイト規制法/改正地震防災対策特別措置法/改正被爆者援護法/ハンセン病問題解決促進法/改正石綿健康被害救済法/改正携帯電話不正利用防止法/改正地方自治法
【政府提出】
改正少年法/改正特定商取引法・割賦販売法/愛がん動物用飼料安全性確保法/改正空港整備法・航空法/改正学校保健法
【事後承認案件】
特定船舶入港禁止の実施/北朝鮮からの貨物に輸入承認義務を課す措置

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「シカト」はお家芸──報ステ・スタイル

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戦犯は小泉内閣だけか。後期高齢者医療制度をめぐって

4月に後期高齢者医療制度(長寿医療制度)がスタートして以来、道路特定財源問題を経てもなお与党支持であった人のなかからも、政府批判が続いている。
後期高齢者医療制度の報道については、お年寄りへのインタビューが主で、お年寄りばかりでなく多くの国民が、“等身大の憤り”をもって迎えている。いま報道のなかで繰り返されているのは、与党の「広報不足・説明不足だった」という言い訳と、知らなかったお年寄りたちの悲鳴。山口2区補選の際をはじめ与党内からも批判の声が挙がっている。また小泉内閣の時限爆弾などという表現もあり、見直しされることもあってか、あたかも「戦犯は小泉内閣」という様相を呈している。
それでは、2年前に決まったというそのとき以来、制度開始が秒読みに入るまで、「なぜ私たちは知らされないままであったのか」。
これを探るため、我々は医療制度改革法案が成立した2006年6月14日、及び翌15日発行の在京新聞各社の報道(東京版)を確認してみた。
*調査対象=読売・朝日・毎日・産経(・共同通信)=見出し等添付pdf参照

★新聞各紙の記事を通読したところ──
 ■記事の趣旨は「高齢者の負担増」が中心。
 ■「後期高齢」という表現を使っているのは、共同通信のみ。
 ■保険料の「年金天引き」について、触れている記事は皆無。

ということがわかった。

すべてに目を通して感じたのは、多くの新聞社ではあまり重要視されていないニュースだったらしいこと。また、いま問題視されている「後期(高齢者)」という呼称や、滞納者に対し保険証取り上げも懸念される保険料の「年金天引き」について、問題視している記事はなかった、ということだ。
2年前のTVニュース報道については、検証の術がないが、新聞よりエンターテイメント性が重視されるメディア特性からして、あまり大きく扱われなかったことが推測されるだろう。
この時期に、医療制度改革関連法案について、積極的に報道していたのは「強行採決」の文字も躍った共産党の政党機関誌『しんぶん赤旗』。6.13の「医療改悪法案で狙う『後期高齢者医療制度』」の記事中に「年金天引き」が明記されていた。

果たして「説明不足」は政府・与党だけだったのか。
現在浮上している問題点は、なぜ報道で取り上げられなかったのか。
成立時の報道で「後期高齢者」「(保険料)年金天引き」が大きく取り上げられ、その内容が、お年寄りをはじめ国民に届いていれば、もっと早くに、世論が大きく動いたのではないか。

2007年参院選のマニュフェストをみると、自民党は「医療制度改革法に基づいた医療保険制度体系の見直しを行う」と言及しているが、民主党では争点とした形跡はない。またいま民主党が公表している「政権政策の基本方針(政策マグナカルタ)」にも、盛り込まれていない。
民主党では、制度見直しに着手した政府・与党に対し「見直しを始める前に、お年寄りの方々の心を大変傷つけたことに対して、お詫びからスタートすべき」と猛省を促した(鳩山由起夫幹事長/5月16日定例会見)。
なぜ、いまになって声高なのか。「総選挙決戦」前にみつけた「新ネタ」であることはいなめないだろう。またこの民主党の姿勢が、報道各社の報道内容に影響したのではないかと考えるのはうがちすぎだろうか。

ちなみに、本法案の閣議決定「健康保険法等の一部を改正する法律案要綱」(2006年2月10日提出)には、「市町村による保険料の徴収には、特別徴収(老齢等年金給付の支払いをする年金保険者に保険料を徴収させ、納付させることをいう。)の方法によるほか、普通徴収の方法によること。」(P27より抜粋)と明記されており、毎日新聞ではこの時点で、「後期高齢者すべて加入し、年金から保険料が天引きされる新たな高齢者医療制度を創設する」(2006.02.10東京夕刊)と報道していた。

報道・ジャーナリズムの使命は「権力監視」といわれる。
言い換えれば、国民の立場にたって、それを感じ、伝えることだろう。
多くの報道陣は、市民感覚として、何も、感じることがなかったのか。
もちろん我々は、後期高齢者医療制度の見直しに期待する者だ。
しかしあらためて、いまの後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の「報道“量”」を振り返るとき、メディアの送り手諸氏に、「あのとき」「なぜ」を問い返したいと思うのだ。

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