民主党の人々

『我が輩は鳩である』

報道とメディアを考える会メンバーが、自主制作した映像を寄せてくれました。会のレポートではシリアスタッチの彼も、今回は、BBCなど世界をまたにかけるコメディアンの地で制作。面目躍如ですね♪

[YouTubeの説明文より]
投票前に必見! ああ、政権交代が待てない...... みなさん、ついに待ちに待った衆院選挙2009がやってきます!国益にかなう一票を投じるためにも、8月30日までに「我が輩は 鳩である」を毎日、一度はみましょう。しかもなんとあの マイケルが友情出演?! ....そして奇跡のMoonwalkを披露.......

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野党党首お膝元の廃屋

TVのワイドショーをつけっ放しでPCに向かっていたら、我々が白鳥大橋レポートのために滞在した町、室蘭市中央地区が「倒壊寸前の廃屋のまち」として話題になっていた。室蘭市の中央地区は、昭和40年代後半までは、「人の肩にぶつからずに歩けないくらい」賑わったという(元)歓楽街だが、いまや見る影もない。日中でも、夜の8時すぎでも、一人も見かけない瞬間があったくらいなのだ。
我々の取材中にも、(元)目抜き通りの交差点の角にある(元)拓銀支店の建物が、封鎖されたまま放置されているのを目の当たりにしたし、「大地震でもあったら一巻の終わり」といった風情の廃屋を何軒も見かけて恐怖を覚えた。無人と思われるビルや商店、住宅は、数しれない。
この廃墟のまちへとつなげるために建設されたのが、かの白鳥大橋(総工費1152億円)。その景観のあまりの落差にただただ唖然とするばかりだったことは、映像からくみ取っていただけるだろうか。
ワイドショーの番組内では、各地で問題となっている「町」の廃墟問題について、コメンテーターらは、いつものように、国や政権政党の責任を連呼する。が、シャッター通り商店街だけでなく、そのまちから車で2〜3分の周辺(=白鳥大橋)についてもレポートし、真の問題点を浮き彫りにしてほしい。
ちなみにこの番組では、間髪をあけず別コーナーで、政界を賑わす「2羽の鳩」(鳩山由紀夫・鳩山邦夫)の生い立ちやいきさつについてレポート。もちろん政権政党に批判的な視点を絡めながら、である。彼ら(制作・発信側)には一つの矛盾もないらしい。

[参考資料]
○札幌TV放送
http://www.stv.ne.jp/tv/dnews/past/index.html?idno=20090604155405
○室蘭民報
http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2009/05/28/20090528m_03.html

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☆あらためて小沢・陸山会・政治資金規正法


*その他の関連ブログ記事もご覧ください。

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★岡田克也・野田国義の選挙戦略〜政権交代のおもちゃにされる橋〜

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★ 「限界集落」は斬り捨て御免〜民主・岡田副代表とおぼろ大橋

 民主党参議院議員大久保勉氏のブログから、民主党が、時期衆議院選挙に向け自民党古賀誠選対委員長の選挙区(福岡7区)に放った刺客「野田国義(くによし)」前八女市長が、10月16日(木)、岡田克也民主党副代表を道路特定財源問題のターゲットとなった「朧(おぼろ)大橋」(八女市上陽町)へ案内したことを知った。
 新聞記事などを検索してみると、西日本新聞が当日夕刊と翌日朝刊で報道。また、20日には、岡田克也民主党副代表が、自身のブログやビデオメッセージでこの福岡・おぼろ大橋視察について「非常に面白い体験をした」と前置きしながら、「無駄な公共工事の典型」と断言している。
 また道路特定財源という争点のほか、野田八女前市長と古賀選対委員長とのたたかいにおいて「全国でも注目される選挙区」と位置づけられ、民主党にとっては「福岡7区」が決戦場であり、おぼろ大橋はあらためて、そのシンボルに位置づけられたことが判った。

◆うその上塗り──増幅される「誠橋」

 我々「報道とメディアを考える会」では、今年1月菅直人代表代行がおぼろ大橋を視察し、おぼろ大橋を古賀誠氏の名前になぞらえた「誠橋」と呼んで、公共事業の無駄遣いの標的にしたことに対し疑問を抱き、2月に現地取材を決行した。
 その結果──
1) 地元(八女市や上陽町)では「誠橋」と呼ばれている事実はないこと。
(おそらく2002年の週刊現代の記事で、写真タイトルに「愛と誠橋」とつけられたことが発祥)。
2) 菅直人氏が「行き止まり」と攻撃した道路は、実際には、狭隘の旧道ながら、久留米市までつながっていること。
3) おぼろ大橋は、福岡県内のみならず、もともと九州全域を含めた、広域の地域交流の要として建設されたものであり、現在1日200台程度の通行量にとどまっているのは、30万都市である久留米市側など、山道(旧道)の整備計画が頓挫していることが主要因であること。
4) 医療格差・雇用格差・教育機会格差などの「格差」解消のほか、高齢化や過疎、農産物の流通、観光など、交流人口の拡大を通して、限界集落の問題解決を目的に計画されたこと。
などを確認している。
 このほか、菅直人一行は「町外の人を連れてきて、サクラのかんじで」という言説も得ている。
*取材の経緯や詳細については「おぼろ大橋レポート」のカテゴリのブログを参照。背景などに言及したpdf版レポート(A4/10頁)も、ダウンロードできるのでぜひご一読を。

◆岡田氏への国民の期待を裏切る言説

 岡田克也氏がおぼろ大橋を「別名、誠橋」とあたかも自明であるかのように主張することに、まず異論を唱えたい。それは地元ではなく、民主党が「行き止まり」など虚偽を喧伝しながら、創出した視察の呼び名ではないかと。
 報道とメディアを考える会のメンバーのなかには、誠実・実直を旨とする岡田克也副代表に期待する声も少なくない。例えば、氏の寄稿記事「小沢さんと私は違う──政権奪取宣言」(『文藝春秋』2008年9月号)では、政権奪取のためには手段を選ばない現民主党執行部への「違和感」が綴られており、「本格的な政策論争で挑んでゆく」という岡田氏の姿勢は、思想信条・支持政党に関わらず、極めて正当に評価されるべきものだろう。
 しかし、おぼろ大橋視察では、地域の事情に耳を傾ける前に「無駄な公共工事の典型」と斬り捨てる岡田氏に対して、「ブルータス、おまえもか」と。
 民主党の選挙向けCM「声を、チカラに(課題)」篇では、「私たちが取り組む課題は あなたの地元の商店街やあぜ道や小さな漁港にあるのです。私たちは対話しています…」と連呼されているのだが。
 救急搬送路や通勤・通学路の確保によって、中山間僻地・限界集落の格差問題を解消し、またこの地域の農産物を、隣接する30万都市などへ届けることで地産地消や食糧自給率向上につなげたいという「地域の願い」は、都市生活者を票田にする民主党の、しかも地域の商店を逼迫させている大手流通イオングループを親族にもつ岡田氏には、邪魔になるばかりということだろうか。
(誠実な)岡田氏ならば政権を任せてもよいのでは……という保守層が確実に存在するだけに、強面や目力に欠ける執行部連よりも、いっそう「罪つくり」ではないか。
 ちなみに民主党から福岡7区で立候補を表明している野田国義前八女市長は、今年7月の八女市議会で、合併や過疎問題に対する討議のなかで、次のように答弁している。
「今、上陽町のほうの過疎地につきましては、例えば尾久保小学校を中心としてどうできるかと。交流人口なんか、子どもたちとか宿泊させたらどうかとか、あるいはグラウンドワークが、朧橋のところでいろいろ活動されておりますけれども、そういうものでいろいろなソフトを、国とかの支援をいただきながら、どうしたらいいのかということで今構築をしておるところでございますので、またよろしくお願いをしたいと思っております。」(八女市議会ホームページ・平成20年第4回八女市議会(7月臨時会)会議録)
 なんとも矛盾した話ではないか。

◆ 「マンガ」と誹謗された決戦場の老人

 今回の民主党副代表岡田克也と刺客野田国義氏の視察報道及び岡田氏のブログなどで、結果として標的にまつりあげられのが、おぼろ大橋建設当時の旧上陽町長、牛嶋剛さんだ。西日本新聞の記事「“誠橋”舞台に自、民攻防」(10月17日付朝刊)によれば、下記のような模様だったとのことで、土下座写真も掲載された。

      *      *      *

岡田氏の視察を知って駆け付けた、古賀誠後援会上陽支部会長の牛嶋剛・旧上陽町長が「道路がなければ町から若者がいなくなる。必要だ」と詰め寄った。だが、岡田氏は「マンガのようだ。税金の無駄遣いの象徴」と橋を批判。牛嶋氏は、橋につながる道路が出来れば通行量も増えるとして「古賀誠と一緒になって(道路を)造ってくださいと叫び、いきなり土下座してみせた。
(西日本新聞10月17日付朝刊「“誠橋”舞台に自、民攻防」より)

      *      *      *

 また、岡田氏のブログなどでも「それで便利になる方もいらっしゃるのかもしれませんが、口的には決してそう多いわけではありません。土下座は1つのパフォーマンスだったと思いますが……」と、クローズアップしている。
 確かに、牛嶋町長の土下座は、「前時代的(陳情)」を想起させてしまう訴求法だが、だからといって、地域の実情(=声)を伝えようと真剣に懇願する人物に対し、いくら人口が少ないからといって、またいくら支持する政治家が異なるからといって、「マンガ」と誹謗する権利はないだろう。
 民主党CMでは地方の声に耳を傾ける「きれい事」の姿勢を謳いながら、「人口的にもそう多いわけではない」と自らの価値基準が人口数(=納税者数・有権者数)にあることを表明しており、所詮、過疎地域の住民の「いのちの重さ」に思い至ることはない。
 岡田氏、そして民主党の政治姿勢をよく表しており、「国政」を任せられるかどうかの重要な指標だろう。

 岡田氏ブログでは、牛嶋前町長が「高速道路までの道を」と訴求したと書かれているが、我々は、これにも懐疑的だ。我々が聞いていたこと(安心してすれ違いができる幅員の道路の確保や、筑後エリア内の周回)と異なるし、20〜50年後といった未来構想である可能性も大きい。前後関係や脈絡を排除し、「そこだけ」「切り取って」、公共工事・無駄・道路族・古賀誠・自民党を攻撃する「演出材料」に利用された可能性もある。
 牛嶋前町長は、それだけ魅力的なキャラクターであるわけだが、誠にお気の毒というほかなく、今回の件でまた血圧があがってしまうのではないかと(高度医療施設への救急搬送路も確保できていないし)、それが心配だ。
 ちなみに、視察に同行した大久保勉氏の当日のブログでは、「久留米市高良大社を越え、山の稜線を通る山道を20分ほど車で走った後、前方に全長300メートルほどの巨大なアーチ上の橋が見えてきました」とあるから、岡田氏一行は、おぼろ大橋から久留米へ辿った県道750号線(耳納スカイライン)を通って、現地入りしたことは間違いないだろう。
 つまり、菅直人代表代行が「行き止まり」と虚偽の喧伝をした道路が、久留米へつながっていることを、身をもって体験・検証しているはずなのだ。

◆ 等身大の限界集落・格差問題

 ところで、菅直人民主党代表代行が朧大橋を視察した直後の1月27日、経営コンサルタントで、2002年には福岡6区補欠選挙で出馬・落選した延嘉隆氏は、地元福岡としての見解を、自身のブログで次のように記している。
 
     *     *     *

 個人的な見解を申し上げれば、“朧大橋”の問題が、『揮発油(ガソリン)税の暫定税率廃止と道路特定財源の一般財源化』議論の言わば解り易い“象徴”として、単に“政争の具”として、今国会で取り上げられることには複雑な思いがあります。
(中略)
確かに、“税金の使われ方”という手法論において、道路特定財源議論と帰結されることは妥当な一面があります。さりながら、より本質的な問題は、単に、“ムダな公共事業”という括りでこの問題を総括することではなく、「公共事業の意思決定プロセスにおいて住民の意思が介在していない」という“予算配分のメカニズム”そのものにあり、そのことが即ち、「国民意識の国家への依存」、さらには、「あらゆる行政課題への無関心」につながっている点にあるのではないかと考えています。
(延☆よしたか「ストリートスマート宣言」 「“朧大橋”(おぼろおおはし)の先にあるもの」より)

     *     *     *

 現地取材を行い、牛嶋剛旧上陽町長ら住民に面談し、限界集落の現状を見てきた我々も、同様の感想をもつ。つまり、問題は、朧大橋や旧上陽町長を政争の具のシンボルにまつりあげることの是非だ。しかも菅直人視察による「誠橋」の呼称や地元(ということになっている人)の反応は、ヤラセの可能性も否定できていない。

 2月に牛嶋元町長のご自宅に訪ねた際、縁側の長押(なげし)には学生服がかかっていた。おそらくお孫さんの進学問題を直近に控えていることだろう。またくねくねした山道を1時間半も辿らなければ、久留米の救急病院に辿り着けない限界集落の高齢者医療問題は、高齢の元町長自身の「きょうの問題」でもある。
 そういった等身大の問題に耳を傾けずに、格差問題を抱えた限界村の住民(生活弱者)を「わかりやすい標的」するのは、政治家として、いや、人間として、いかがなものか。田舎の一老人を犠牲に、都市生活者という大票田をターゲットに喧伝する民主党に、日本の舵取りを任せてゆけるのだろうか。
 しかも、都市生活者のほとんどは、実は、田舎にルーツがある。
 もちろん食糧自給は農山村に頼らざるをえない。
 問題の根の深さに、あらためて、思い至るのである。

*「続きを読む」に2月に行った牛嶋前町長へのインタビュー映像を再掲載。

[資料]
☆西日本新聞資料
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/election/2008syuin/fukuoka/20081017/20081017_0002.shtml

☆岡田克也公式ブログ「TALK-ABOUT 直球、健在。」
http://katsuya.weblogs.jp/blog/2008/10/post-8ed6.html
☆岡田克也「週刊ビデオメッセージ」
http://www.katsuya.net/message/2008/10/20.html

☆延☆よしたか「ストリートスマート宣言」
“朧大橋”(おぼろおおはし)の先にあるもの
http://www.nobuyoshitaka.com/archives/51209985.html

☆参議院議員大久保勉 公式ウエブサイト「朧大橋視察」(2008年10月16日)
http://blog.goo.ne.jp/tsutomu-okubo/e/946b29f1a0b4d148580a54b5281ee47b

☆ 八女市議会ホームページ
http://www.city.yame.fukuoka.jp/gikai/gikai_top.html

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選挙前に野党へ政権禅譲? 朝日新聞★さんの見識

 9月1日、午後9時半──。福田康夫内閣総理大臣の辞任会見以来、テレビをはじめとする各メディアは、政権の話題でもちきり。芸能人や文化人のコメンテーター、野党議員、マスコミの解説委員、政治評論家までが、そろって安倍氏辞任になぞらえた「突然」と、福田氏の「無責任論」の大合唱。若者やネットの世界では「あなたとは違ってね」が流行語になるというおまけもついた。

◆ときには新聞「紙」を読もう

 翌朝9月2日の全国新聞各紙は「福田首相辞任」の記事がトップに踊り出た。各紙をざっと見て印象的だったのは、各紙の1面で、社説とは別に、政治部長論など責任ある立場の人の署名記事が掲載されていたことだ。

例えば──
┌────┬────────────────────┐
│日経新聞│麻生後継へ「あうん」の呼吸       │
│    │      客員コラムニスト 田勢弘康 │
├────┼────────────────────┤
│産経新聞│あの強い政治家どこへ〜首相退陣に思う  │
│    │         論説委員長 皿木喜久 │
├────┼────────────────────┤
│読売新聞│政治の責任自覚せよ 政治部長 赤座弘一 │
├────┼────────────────────┤
│毎日新聞│信念なき政治の漂流 政治部長 小松 浩 │
├────┼────────────────────┤
│朝日新聞│野党に譲って民意を問え 編集委員 星浩 │
└────┴────────────────────┘
           (2008年9月2日 東京・朝刊)

 傍目(はため)には突然に見えても禅譲を前提に周到に考えた決断であることを指摘したもの(日経)をはじめ、吉田茂元首相を題材にしたエッセイ風の記事(産経)、民主党を含めた政治全体の責任を問うもの(読売)、固い信念をもって国家を率いる指導者を持たない日本国民の悲劇を謳うもの(毎日)、野党に政権禅譲すべきと意見を明確にしたもの(朝日)と、タイトルからも、それぞれの論調の違いが読み取れると思う。
 新聞の購読者数は減少し、ネットニュースやTVのニュースワイドが幅を効かせる昨今。ニュースを断片的にとらえることが日常的になってしまったが、新聞を手にとってみると、今回の福田首相辞任のニュースでも、1面では会見の趣旨を伝え、政治面では詳細な会見の要旨や解説、支持率・政権の歩みなど、社説で新聞社としての意見を表明、そして社会面で町の人や識者のコメントを伝えるなど、1つの事柄について立体的に報じていて、考える材料を提供してくれる。ましてこうして読み比べしてみると、各社の報道姿勢が読み取れるほか、行間(脈略)から真実に近づくことができる。
 複数の新聞を読み比べするにはたいへんな時間と労力が必要だが、あらためて新聞の使命(*)を評価したいと考えた。

*「おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである。」(新聞倫理綱領より)

◆解散・総選挙ではなく、野党への禅譲を進言?

 ところで、報道ステーションやサンデープロジェクトなど、テレビでもおなじみの朝日新聞星浩編集委員の記事を読み返して、目を疑った。
「自民党がいま、国民のためになすべきことは、自民党内の政権のたらい回しではない。民主党に政権を譲り選挙管理内閣によって、衆院の解散・総選挙で民意を問うことである。国民の手に『大政奉還』して、新しい政治を築き上げる時だ。」(朝日新聞東京本社2008年9月2日朝刊「野党に譲って民意を問え  編集委員 星 浩」より)

 …………? さらっと読み飛ばした人は、もう一度読み返して欲しい。
解散・総選挙によって民意を問うのではなく「民主党に政権を譲り選挙管理内閣」と明言している。つまり、我々が中学の社会(公民)の授業以来持ち続けている常識(=議会制民主主義の我が国では、衆議院で多数を占める政党が政権を担当する)とは異なる内容だった。
 星氏の論評は何度読み返しても、“福田氏は解散・総選挙で民意を問うべき”ではなくて、“まずはいったん民主党に政権を禅譲するべき”である。戦後民主主義のもとに生きている我々には、到底受け入れられないのではないだろうか。
 しかし星氏の筆は、次のようにすすむ。
「自民党が誕生する前の保守政治の歴史には、時の政権が行き詰まったら『憲政の常道』として、野党第1党に後を委ねる慣行が成立していた時期もある」(前出)と補足されている。
「憲政の常道」を調べてみると、「二大政党の党首が交互に首相となることを立憲政治の当然のあり方とする考え方。第一次護憲運動のとき、超然内閣に反対して主張された」(デジタル大辞泉 小学館)とあり、大日本帝国憲法下の慣例でしかないことが判った。また現行の日本国憲法下でも持ち出された例はあるようだが「内閣の失政による総辞職」が要件であるため、今回の福田辞任はこれに当たらないだろう。

 星氏の文章を読んだ当初、(夜の会見で朝刊の締切時間に制約があったため)整理部でのチェック漏れかとも考えたが、どうやら政党政治の歴史を熟知したうえで福田首相の「失政」を(ご自分の判断で)既定のものとし、周到な文章のもとに(選挙以前の)「民主党への政権禅譲」を提言したことになる。しかし「憲政の常道」という伝家の宝刀を主張できるのは野党第1党である民主党自身であって、国民ではない。つまり、星氏は、新聞という社会の公器を使って民主党代表へのメッセージを送ったのではないかとも考えられる。

◆民主党代表小沢一郎氏の発言も「憲政の常道」に呼応

 星氏の提言との関係は不明だが、会見の翌日の午前10時から民主党本部で開かれた緊急の幹部会の席上、「小沢氏は『福田政権が行き詰まったわけだから、憲政の常道として、野党へ政権を譲るべきだ。そうでない場合は、一刻も早い衆院解散・総選挙で国民の信を問うべきだと主張しよう』と述べた。幹部会はこの小沢氏の発言を了承した。」と伝えられている(Yahoo!ニュース/9月2日11時53分配信/産経新聞)。また、民主党ホームページのニュース(2008/09/02)でも「憲政の常道を踏まえれば、福田政権が行き詰まったからには、野党に政権を譲れと主張することが大事だとの認識を示し……」とある。

 つまり、我々国民は、選挙によってではなく、戦前の慣例「憲政の常道」によって、政策論議に触れる機会も、政権を選ぶ権利をも奪われていた可能性もあったということらしい。しかし各マスコミもほとんど取り上げなかったところをみると、また民主党もその後、声高に主張していないところをみると、さすがに「憲政の常道」による野党への政権禅譲は、(支持政党に関わらず)現在の国民意識と乖離していることを理解しているようだ。

 言論・表現の自由において、また法的な解釈において、星氏の論説は問題がないのかもしれない。
 しかし、それでは、前回の衆議院選挙で自民党を第1党とした「民意」はどう解釈されているのか。ここでは衆院選と参院選の重みの違いには言及しないとしても、現在の「ねじれ国会」状態について、議論をすすめるという意味で、歓迎する民意の表れと考えられるのではないか。
 いまの我が国のおかれている危機的状況のもとで、新聞の公共的使命に立ち帰るとき、主権である国民の立場を忘れ、「一定の政治的意図」に基づいた論評が「正確で公正な記事」といえるのか、その新聞人としての見識に、はなはだ疑問が残る。
 この記事は「民意を問うため」に判断材料を国民に提供することよりも、自身(もしくは自社)の主義主張で世論誘導を図り、巧妙なすり替えがなされているようにも見えるのだ。

◆ 品格あっての表現の自由と報道姿勢

 メディアウォッチを始めてから、テレビ局や新聞社、また番組や媒体ごとに一定の方向性や意図のもとに、制作されていることが判ってきた(意図的に報道しないことも含めて)。マスコミに限らず、我々国民には、言論・表現の自由があるが、それは新聞倫理綱領が謳うように「すべての新聞人は(中略)読者との信頼関係をゆるぎないものとするため、言論・表現の自由を守り抜くと同時に、自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない」ことが前提だろう。
 今回の記事に限らず、朝日新聞やテレビ朝日には、偏向報道や姿勢が指摘されることが多く、ネットの保守系ブロガーたちからは「アカヒ」と揶揄されている。このほか、元朝日新聞記者の稲垣武氏が書いた『新聞・テレビはどこまで病んでいるか』(小学館文庫)をはじめ、『これでも朝日新聞を読みますか?』(山川澄夫著・ワック)、『「モンスター新聞」が日本を滅ぼす』(高山雅之著・PHP出版)、『朝日新聞の大研究』(古森義久他著・扶桑社)など、出版の世界でも朝日新聞の報道姿勢に対する批判は枚挙にいとまがない。
 また、去る6月6日、「朝日新聞とテレビ朝日が資本提携強化」というニュースが入ってきた。今後、報道ステーションなどテレビ朝日系の番組では、朝日新聞との連携が強化され、いっそう一定の方向性に沿った報道(見方によっては偏向)がなされていくことだろう。
 解散・総選挙を目前に、批判的視点をもって新聞やテレビのニュースに接するべきだという意を強くする。また我々は、「国民の知る権利」に奉仕するという報道の使命に期待している。しかし新聞社やテレビ局は私的企業でしかない。せめてマスコミ人としての品格に立ち帰ってほしい……と考えるのは、横綱の品格と同様に夢物語か。

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★小沢隠し資産「物件めぐり」レポート

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◆ほんとの姿を見せてくれ───政党発ネット考

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☆小沢「隠し資産疑惑」裁判。判決文を見た。

6月4日、民主党小沢一郎代表が、『週刊現代』(講談社)に敗訴した、東京高裁(つまり2審)の判決文を見る機会を得た。
控訴人や非控訴人、弁護人の名がずらりと並ぶ1ページに続く、2ページの「主文」を見て、苦笑してしまった。
曰く「本件控訴をいずれも棄却する」
曰く「控訴費用は控訴人らの負担とする」
という2行。控訴した小澤一郎(通称:小沢一郎)氏らの「全面敗訴」であることが、あまりにも明確に、短文で提示されていたからだ。
立場を変えて小澤一郎氏側の立場に立って考えて見れば、勝てないまでも落としどころがあると読んで始めた裁判なのに、「けんもほろろ」な判決だったことが想像できる。

■控訴内容は小澤氏と民主党合計で6000万円と金利

控訴内容は、
1) 小澤氏(個人)に対し、3000万円と、当該記事の雑誌発行日(2006年5月23日)から支払い済みまで年5分の利息を支払え。
2) 民主党に対し、3000万円と、当該記事の雑誌発行日(2006年5月23日)から支払い済みまで年5分の利息を支払え。
3) 控訴人が用意し、条件を示した謝罪広告を、週刊現代のほか、朝日、読売、毎日の各新聞に掲載せよ。

……というもの。
つまり、名誉毀損により、小澤氏個人(3000万円+利息)、民主党(3000万円+利息)と謝罪広告を求めていたものが、東京高裁へ上訴までしたのに、あっさり棄却されたわけだ。

■ 事実をもとにした意見は名誉毀損ではない

判決文のうち、「事実及び理由」では、週刊現代の記事や広告等の内容を子細にわたり点検・検討するもので、記事等から、知っていることがほとんどだった。
ただ、注目したのは「事案の概要」の2「記事による名誉毀損における違法性及び故意過失」。我々なりに「翻訳」すると以下のようになる。

● 事実であることの証明がなくても、執筆者が事実と信じるにたる理由があれば、故意や過失で名誉毀損したとはいえない。
●事実をもとに、公共の利害や、公益を目的に執筆(表現)したものであれば、故意または過失で、名誉毀損したことに当たらない。
●事実を前提とした意見や論評によって名誉毀損にあたるかどうかは、読者の判断にまかせられる性質のもの。

──というもの。
週刊現代の記事の、詳細な調査や多面的な取材を読んで、我々が感じたことと遠くない。つまり、きちんと調べ、また反対意見を含めて構成している事実に基づいた記事には、ある種のジャーナリストとしての「誠実さ」が感じられ、それを名誉毀損で訴えるのはおかど違いでは?ということだ。
尚、小沢氏側は、判決に不満であれば、判決から2週間以内に上告できたはずだが、上告は見送った。つまり判決を受け入れたということだ。


■ なぜ、首相にならんとする人物の裁判が報道されない?

それにしても、なぜ、一国の総理にならんとする人物=小沢一郎(小澤一郎)氏の裁判について、テレビや主要新聞(共同通信と産経新聞はのぞく)は報じなかったのだろう。私たちは「国民の知る権利に奉仕する」というマス・メディアの使命・役割を信じている。いや、信じたい。
調べれば調べるほどに、なぜ報道されないのかに立ち帰ってゆく。
ネットのブログ等では、さまざまな理由が挙げられている。しかしそれらの大半は、無責任な「床屋政談」であって、我々がその信憑性を確認することが難しい。

ちなみに、平成19年2月20日の事務所費の公開に当たっての記者会見で小沢一郎民主党代表は、「いずれにしろ、報道機関の皆様には、いかなる場合においても、私の意志がきちんと実現されるよう、今後、厳しく監視していただきたく宜しくお願いいたします」と締めくくった。

この「お願い」に応えているのは、週刊現代や週刊新潮などの一部の週刊誌が主だ。小沢一郎氏自身が、そう要請しているのに、なぜ、TV局や朝日や毎日、読売新聞などの報道機関は動かないのだろう。

あまりの迷宮と問題の根の深さに、疲労が募るばかりだ。

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☆小沢代表が敗訴した「記事」を入手(pdf付き)

民主党小沢一郎代表が敗訴した「隠し資産」に関する東京高裁の判決内容を知りたいと考え、裁判所の「判例検索システム」(判例データベース)に掲載されるのを心待ちにしていたが、掲載は見送られたようだ。
法律関係の仕事をしている知人に聞いてみると「すべての判決が掲載される訳ではない」そうだ。我々のように、(報道で取り上げられない)国会議員に関する裁判の内容を知りたい……という動機は、データベース公開の趣旨とは異なるということらしい。国民の税金で運営されているのだから、こういった国民の知る権利に応える裁判所であってほしい。

◆ 丹念な取材・調査に基づいた『週刊現代』記事

そこで、裁判の元となった『週刊現代』の記事「小沢一郎の“隠し資産(6億円超)”を暴く ジャーナリスト 長谷川学」(2006.6.3)を確認することにした。
5ページにわたる記事中では、表組みで「小沢一郎・蓄財の歴史」と「小沢一郎・全資産(マンション/土地・建物)」が紹介され、また地元後援会長の談話や小沢事務所の回答もあり、丹念な取材・調査に基づいて、事実をたんたんとレポートしているという印象を受けた。名誉毀損にあたらないという裁判所の判断もうなづける。
記事のコピーはpdfにして添付したので、小沢氏を支持している人、支持しない人の双方に、ぜひ目を通してほしい。

◆隠し資産問題とは名義の付け替え

問題をまったく知らない人のために、小沢氏の疑惑を簡略に解説すると(といっても長い)───
小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」が所有するとされる、都内一等地等計10戸のマンション(購入価格約6億1000万円)について、政治団体は権利能力なき社団、つまり法人格がないため、「小澤一郎」個人名義で登記している。しかし、政治資金規正法では、政治団体は資産として土地や建物を計上してよいことになっている。
そのため、この資産について、「陸山会」の収支報告書には記載されているが、小沢氏個人の議員としての「資産等報告書」には記載がない。
この方法をとると、小沢氏の死後、相続の対象である個人資産となる可能性を否定できないほか、政治団体には税法上の優遇措置があるため、「税金逃れ」や「資産隠し」ととられてもいたしかたない部分がある。また政治資金団体の資産について、国税局もタブー視しているといわれる。

つまり、法律自体が矛盾しているなかで、小沢氏は、合法ではあるが、制度の欠陥をうまく突いた資産運用=高度な財テク法を行っている可能性が大きいという訳だ。

◆問題の本質は、資産運用の是非

種々の週刊誌報道などを含めた報道記事を振り返ってみると、この「資産名義の付け替え」をもとに、さまざまな疑惑が浮かび上がっているようだ。例えば、登記上の「小澤」という旧字の表記と「小沢」の使い分けなど、どれも細かく、複雑なもので、素人には分析が難しい。

2007年2月、小沢氏は事務所費公開にあたり記者会見で「不動産は個人所有していない」と明言したことは、新聞の一面などで報道されたので、記憶に残っている人も多いのではないかと思う。
しかし問題は合法であるかどうかではなくて、献金によって成り立ち、優遇税制のもとにある国会議員の政治資金管理団体が、大量の不動産を取得して資産運用すること自体の是非だろう。
国民の理解を得られるかどうかがポイントだと考えられるが、TVなどで報道されなければ、国民が知る機会も少なく、したがって論議の機会さえも奪われしまっている。TVの報道番組、例えば我々国民の見方を自認する「報道ステーション」にもぜひ解明して欲しい課題だ。

◆ 1億円超の物件をぽんと寄付

 ところで、2007年7月、政治資金規正法が改正され(1月1日に施行)、「資金管理団体による不動産の取得等の制限」が追加された。
「第19条の2の2 資金管理団体は、土地若しくは建物の所有権又は建物の所有を目的とする地上権若しくは土地の賃借権を取得し、又は保有してはならない」(平成19.7.6法律107号)というものだ。

 また、先週発売された『週刊新潮』(「密かに『疑惑事務所の処理』を始めた小沢代表の『総理戦略』」2008.7.17)では、問題となっているマンションの一つ、「グラン・アクス麹町」の物件は、7月1日、陸山会から、テナントとして賃貸していた「ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター(会長:小沢一郎)」に寄付され、移転登記されたことを報じている。

 これまで、小沢氏(または資金管理団体)の資産は、「いざ政権を獲るときに活用しようという前提で残している」(小沢氏の資金管理団体の会計責任者平野氏談話 『週刊文春』2007.10.25)と説明されてきた。
 隠し資産疑惑について、強気の説明をしてきた小沢氏も、政権奪取を目指した衆院選を前に、国民の理解が得られるように身綺麗にしておこうということか。
 しかしそれなら、売却して民主党に寄付してもよさそうなもの、と考えるのは、いまだ政治家に夢を託そうとしている庶民の感覚か。

*pdfもあわせてお読みください。

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